新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

295: ニシキベラ

スズキ目ベラ亜目ベラ科カンムリベラ亜科ニシキベラ
学名:Thalassoma cupido (Temminck and Schlegel)
英名:Cupid wrasse [原] (FishBaseに英名表記なし)

静岡県の伊東漁港付近で、職場の関係者の一人が手釣りで釣り上げてくれた全長8.5cmの個体から摘出した擬鎖骨付きの標本。写真右の標本は射出骨付きで、角度的にも「魚のサカナ」の真横から撮影したものではない(烏口骨の『嘴』部が写真手前側に飛び出ている状態)ため印象が大きく変わって見える。ご注意頂きたい。

さて、「錦倍良のニシキベラ」は、一見これといった特徴がない「魚のサカナ」にも見えるが、これまでに摘出/紹介してきたどのベラ科の「魚のサカナ」ともさほど似ていないという点で独特。肩甲骨の先端は直線的で、烏口骨の『背鰭』部分は鋭角的に比較的長く尖り、下方の湾入部が大きいため『嘴』部分は細めで長く伸びているように見える。肩甲骨孔はベラ科の「魚のサカナ」にしては比較的小さめで楕円形。

「錦倍良のニシキベラ」と擬鎖骨の結合は比較的広範囲に渡るためか非常に強固である。写真上は、本稿頭で紹介した左右の標本を擬鎖骨から外したところであるが、右の標本は「魚のサカナ」の下部が擬鎖骨側に残ってしまった為に抉れており、また左側の標本では逆に擬鎖骨の一部(標本下から帯のように伸びている部分)が「魚のサカナ」側に付いている状態である。ちなみに後者の烏口骨の『嘴』部分の先端付近は調製時に少々曲がってしまったが、本来はもっと直線的である。



非常に派手で独特の体色のため、水面を覗いた時(=釣り上げる前)からニシキベラであると思われたが、念のため「日本産魚類検索 全種の同定 第2版」の同定の鍵を辿り、1)側線は体側後部で中断せず、急に下降する、2)背鰭は8棘18軟条、3)両顎歯はすべて犬歯状歯であり、前方に突出せず、先端部の1対は大きい(写真中段右)、4)体長は体高の6倍未満、5)吻は著しく突出せず、短い筒状ではない(写真中段左)、6)唇は肥厚せず、眼の下縁は上唇上端よりも下にある(写真中段左)、7)下顎に切れ込みがない、8)側線有孔鱗数は25(50以上ではないのは確実)、9)前鰓蓋骨後縁は円滑、10)背鰭第1・2棘の鰓膜は伸長しない、11)頬部に鱗がない(写真中段左)、12)胸部の鱗は体側中央部の鱗より小さい(写真下段左)、13)背鰭起部は主鰓蓋骨の後半部よりも後方にある、14)体側に斜帯も多数の短い暗色横線もない、15)尾鰭中央部に幅広い暗色域があるが、両葉先端にまで及ばない(写真下段右)などの形質からニシキベラに辿り着くことを確認。

今回は食していないが、ネット上の情報ではなかなか美味いとのこと。もう少し大型の個体が幾つか手に入ったら色々な料理にチャレンジしてみたい。