新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

312: アサバガレイ

カレイ目カレイ亜目カレイ上科カレイ科カレイ亜科ツノガレイ属注1
学名:Pleuronectes mochigarei (Snyder)注1
英名:Dusky sole [原], Ricecake sole

北海道産の全長約34cmの雌個体から摘出した「魚のサカナ」。上が有眼側、下が無眼側の標本。

有眼側(左)および無眼側(右)の標本を、拡大して写真上とは反対側から観察。「浅羽鰈のアサバガレイ」も、その特徴から一見してカレイ/ヒラメ類の「魚のサカナ」であると予想できる形状であるが、やはりこれまでに紹介したものの中に「酷似」したものはない。強いて挙げれば、「左右」は逆だがヒラメのものが最も近く、次いでイシガレイのものが似ているように思われる。また有眼側/無眼側ともに烏口骨の『嘴』部分が針状にまっすぐ伸びることなどはマツカワムシガレイのものなどでも見られる特徴だが、これらの肩甲骨は前縁下部が尖っており全く形状が異なる。



「日本産魚類検索 全種の同定 第2版」を開き、1)眼は体の右側にある、2)有眼側の体にイボ状突起が密に分布しない、3)有眼側の鰓孔上端は胸鰭上端より上、4)顎歯は1列の微小犬歯状(写真中段左)、5)口は小さく頭長は上顎長の3.2倍以上、6)体は楕円形、7)背鰭は71軟条、8)臀鰭は59軟条、9)体は鱗に被われ、石状骨質板はない、10)眼上に鱗がない(写真下段右)、11)側線鱗数は67よりはるかに多い(正確には計測していない)、12)側線は前方部で上方に湾曲する、13)眼の後方にツノ状の骨質突起がない、14)背鰭・臀鰭の有眼側・無眼側のどちらにも黒色帯がない、15)頭部背縁はくぼまず、なだらか、16)後頭部から背鰭基底に向かう側線分枝がある(写真中段右の緑矢印)、17)頬部は円鱗に被われる(写真下段左)、18)両眼間隔には骨質イボ状突起をもった鱗が散在する(写真下段右)、19)有眼側の体は茶色っぽい(生時ではないが)などの形質からアサバガレイであると判断。

一般にカレイ類は無眼側を上にして売られているため、無眼側に表徴形質がない場合は種の判別が難しいことも多いが、アサバガレイの後頭部から背鰭基底に向かう側線分枝は無眼側でも確認できる(写真上/ただしこの「側線分枝」はシュムシュガレイにも存在する注2)。

八王子総合卸売センター内、総市水産で購入(当日は250円/匹)。箱書は『大浅』で、恐らく「大」型の「浅」羽鰈の意であると推察。今回は定番であると思われる煮付けに。身は非常に柔らかく、旨味もない訳ではないがそれほど多くはない。抜群の高鮮度という訳ではなかったこと、また今回は関西風に薄めの煮汁で炊いたこともあってか、率直に言って美味さは「まずまず」程度。もしかしたら関東風に甘辛い煮汁で煮付けた方がもっと良かったかも。また今回も無眼側の身の方がやはり多少旨味が多めという印象あり。


【注1】「日本産魚類検索 全種の同定 第2版」および「WEB魚図鑑」ではアサバガレイの学名として Pleuronectes mochigarei (Snyder)を掲載しているが、FishBase および「新訂原色魚類大圖鑑」では、Lepidopsetta mochigarei Snyder をaccepted nameとし、P. mochigarei はシノニム扱い。またそれに付随して、Genus Lepidopsetta を「新訂原色魚類大圖鑑」では「シュムシュガレイ属」としているが、ネット上の情報ではこれを「アサバガレイ属」としているものもある。そこで日本魚類学会の「シノニム・学名の変更」を調べてみたが、アサバガレイに関連する項目は掲載されていなかったので、本稿では「日本産魚類検索 全種の同定 第2版」の表記に合わせ Pleuronectes mochigarei (Snyder) とした。

【注2】スーパーなどにもドレス(=頭を落とされた)状態で「アサバガレイ」と表示された冷凍輸入魚が良く売られているが、東京都福祉保健局のサイトにある「WEB版 築地市場のさかな」の「アサバガレイ」および「シュムシュガレイ」の項を見ると、これらの中には近縁のシュムシュガレイ(有眼側の体色が黒っぽく、頬部が強い櫛鱗に被われるが、ドレス状態では頬部の櫛鱗を見分けるのは不可能)が多く含まれている模様。また北陸地方などではムシガレイのことを「アサバガレイ」と呼ぶこともあるので紛らわしい。