新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

340: ハマフエフキ

スズキ目スズキ亜目フエフキダイ科フエフキダイ属
学名:Lethrinus nebulosus (Forsskål)
英名:Spangled emperor [原], Pig-faced bream, North-west snapper, Starry pigface bream, Blue emperor

地方名/流通名たまん(沖縄)、たまみ(九州/関西)、ふえふき(ただしフエフキダイ科の魚の総称的に使われることも多い)など。大分県産の全長約44cmの活け〆雌個体(抱卵中)から摘出した左右の「魚のサカナ」。「浜笛吹のハマフエフキ」は、これまでに紹介してきたフエフキダイ科の「魚のサカナ」の中では、ホオアカクチビのものに最も良く似ているように思われる。ただし、1)肩甲骨孔が楕円形、2)烏口骨の上方突起『背鰭』部分の形状が異なる、3)烏口骨の『嘴』部分の長さが多少短めであるなど、いくつかの相違点を挙げることは可能。

「浜笛吹のハマフエフキ」の烏口骨『背鰭』部分のうねりは比較的大きい。



店頭で見た時からハマフエフキであることは間違いない個体であったが、念のため「日本産魚類検索」のフエフキダイ科の同定の鍵を辿り、1)頬部に鱗がない(写真中段左)、2)胸鰭軟条数は13、3)背鰭は10棘9軟条、臀鰭は3棘8軟条(写真下左)、4)胸鰭基部の内側に小鱗が密生する(写真中段右の赤丸)、5)体側に暗色斑がない、6)背鰭第2棘条は伸長しない、7)尾鰭両葉先端は尖る(写真下右)、8)尾鰭最長軟条長は臀鰭軟条部基底長より短い(写真下左右)、9)体側の各鱗に暗色斑がない(写真下段左)、10)背鰭棘条中央部下における側線上方横列鱗数は6(写真下段左)、11)吻部・頬部に2〜3本の暗色斜帯がある(写真中段左)、12)腹鰭は比較的暗色である(写真下段右)などの形質を確認してハマフエフキであると判断。

2011年7月に八王子綜合卸売協同組合の三倉で購入(当日はキロ1,900円/1.2kg)。大分県の丸昌水産が出荷した活け〆物で、口には『最後の晩餐』となったキビナゴを銜えていた。これまでに扱ってきた他のフエフキダイ科の魚同様に、皮を引く前は少々磯臭さのようなものも感じたが、皮を引いてしまえば全く気にならなくなる。今回の個体は皮目を中心にもの凄い脂の乗りで、腹腔内にも巨大な脂の固まりが鎮座。今回は刺身、蒸し物、塩焼きに。刺身にすると、血合い部分の赤色との対比が大変美しい。身には旨味も多く含まれ、脂からの甘味もある。メイチダイのように身が柔らかいので刺身の好みは分かれると思うが、個人的にはかなり美味いと思った次第。軽く蒸した物は、刺身より旨味が立つ。身が締まり食感が改善されるのも大きなポイント。また塩焼きにすると、パリッした皮の中に旨味が閉じ込められており、身質もしっとりふんわりしており非常に美味い。刺身の食感があまり好きではないという連れ合いも、熱を通した料理は非常に気に入ったとのこと。


【追加情報1】ハマフエフキの上顎内側は紅色(写真下)。フエフキダイ科の魚を総称する地方名の一つに「くちび」があるが(ちなみに上記したホオアカクチビは標準和名)、『釣り曜日/ハマフエフキ』によると「フエフキダイ科には口の中が赤いものが多いため、口緋か、口火の意味であろうと思われる」とのこと。

【追加情報2】ハマフエフキ/たまんは沖縄県糸満市の『市の魚』。実際糸満市には「FM たまん」というコミュニティーFM局が存在する(写真は2011年5月撮影)。