新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

339: メゴチ

スズキ目カサゴ亜目コチ科メゴチ属
学名:Suggrundus meerdervoortii (Bleeker)
英名:Big-eyed flathead [原]

千葉県産の全長約20cmの個体から摘出した左右の「魚のサカナ」。射出骨付き。写真右は、写真左の左側の標本を反対側から観察したもの。「眼鯒/女鯒のメゴチ」は、これまでに紹介済みのコチ科の「魚のサカナ」と基本的な特徴を共有しているが、烏口骨の『嘴』部がスラッと長く、「魚のサカナ」全体も左右方向に長いなど、その中ではイネゴチのものに最も似た印象(実際メゴチとイネゴチは魚体の外形や体色なども良く似ている)。ただし、1)肩甲骨の前縁部が垂直でなく、下部が抉れる、2)肩甲骨孔が比較的大きい、3)烏口骨本体下部から『嘴』部に向かう湾入部が浅いなど、幾つかの相違点を挙げることができる。

本稿で紹介している魚はカサゴ目コチ亜目コチ科に属する「標準和名メゴチ」であり、釣り人の間や特に関東の市場などで「めごち」と総称され、天ぷら種としても有名なネズッポ亜目ネズッポ科の魚達(ネズミゴチ、トビヌメリ、ヨメゴチなどを含む)とは、『目(もく)』のレベルで異なる遠縁の魚である(ちなみに大阪辺りではネズッポ科は「ガッチョ」と呼ばれる)。同じような細長で平たい体型に『収斂進化』しているために紛らわしいのは事実だが(実際「メゴチ」で画像検索すると、ヒットする写真のざっと8割はネズッポ科の魚のものである)、コチ科とネズッポ科の「魚のサカナ」の形を比較すればその違いは一目瞭然のはず。是非ご確認頂きたい。ちなみにこれまでに調べられた全てのコチ科魚種は「雄性先熟型」の性転換を行うとのこと(つまり小型の時は雄で、成長すると雌になる)。



「日本産魚類検索」のコチ科の同定の『鍵』を辿り、1)両眼間隔が狭い(写真上段左)、2)頭部の棘は強い、3)頭部は縦扁するが著しくはない、4)両眼間隔(写真上段右の緑四角)、眼下骨隆起線(写真中段右)の棘は著しく小さくなく、肉眼で数えられるほどの大きさである、5)眼下骨系の隆起線は5棘以上(写真中段右)、6)眼の虹彩皮膜の上片は樹枝状でない(写真中段左)、7)間鰓蓋部に皮弁がある(写真下段左の赤丸)、8)第1背鰭後半部は黒い(写真下段右の赤四角)、9)後頭部の隆起線は鋸歯状、10)眼下隆起線には鋸歯状の部分(写真中段右の赤四角)と強い棘の部分があるなどの形質からメゴチであると判断。またメゴチの外形は、イネゴチに比べ頭でっかちでずんぐりしているような印象を与えるもの。

メゴチの体側の小黒斑点は側線より背側にはほとんど見られない(写真上左/イネゴチでは側線より背側にも小黒斑点が散在)。また尾鰭の模様は褐色の横帯状(写真上右)。

2012年6月に八王子綜合卸売協同組合のマル幸水産で購入。店頭に置いてあった千葉産の「入り会い」から、小さなタカベ2匹とアカヤガラとともにピックアップしたもの(当日はキロ500円/5匹合わせて0.41kg)。今回の個体は単純に塩焼きに。いわゆる「水っぽさ」が多少あり、身は柔らかめであるものの、旨味はあってなかなか美味い。

メゴチの「大龍」に相当する骨の固まり。体形からも想像できる通り、非常に平たいもの。