新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

378: ヒメスミクイウオ

スズキ目スズキ亜目ホタルジャコ科スミクイウオ属
学名:Synagrops philippinensis (Günther)
英名:Sharptooth seabass, Splitfin(『原色』に英名表記なし)

愛知県蒲郡市西浦産の全長約10.5cmの個体から摘出した「魚のサカナ」の標本。「姫墨食魚のヒメスミクイウオ」は、肩甲骨と烏口骨本体の上縁が両者の接合部を中心に上方に盛り上がるなど、これまでに紹介してきたホタルジャコ科の「魚のサカナ」と形状の特徴を共有していることが一見して分かるもの。それらの中ではアカムツ(特に新潟産の個体からの標本)のものに最も良く似ているように思われるが、「姫墨食魚のヒメスミクイウオ」のものでは、1)肩甲骨孔の上方に小孔が存在する、2)烏口骨の上方突起(『背鰭』)部が槍のように尖る、3)烏口骨の『嘴』部分がより下方に向かうので、左右方向が多少寸詰まりに見えるなどの相違点を挙げることが可能。

ヒメスミクイウオの耳石は魚体や「魚のサカナ」のサイズに比して大きい(ホタルジャコ科魚種の特徴かもしれない/要確認)。



『日本産魚類検索 第2版』の検索キー(『第3版』でも変更なし)を辿り、1)臀鰭棘は2本(写真下段右/針の左側の2棘だが、第1棘は非常に短い)、2)腹鰭棘の前縁は鋸歯状(写真中段右の赤矢印)、3)第1背鰭(写真下段左の青矢印)と臀鰭(写真下段右の青矢印)の第2棘の前縁はなめらかなどの形質からヒメスミクイウオであると判断。また『新訂原色魚類大圖鑑』に記載されている、4)眼は大きく、眼径は吻長、眼隔域長より長い(写真中段右)、5)口が大きい(写真下左)、6)上顎に絨毛状歯、両顎に犬歯があり(写真下左)、口蓋骨と前鋤骨にも歯がある、7)前鰓蓋骨の後下縁は突出し鋸歯状(写真下右の赤四角)、8)第2背鰭と臀鰭はほぼ相対する、9)尾鰭は2叉などの形質も確認した。

2012年12月に愛知県蒲郡市にある西浦鮮魚マーケット組合の○河・河井商店で入手。前エントリーの「ヒメ」の山に1匹だけ紛れ込んでいたものだが、ヒメだけを袋に入れてくれた店員さんが「これは要らないよね?」と捨てそうになり、「いやいやいやいや要ります!」と慌てて静止して手に入れることが出来たもの。今回は「魚のサカナ」を摘出しただけで終わってしまったため、味の確認は出来ていない(次の機会には是非とも)。