新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

30: トビウオ

ダツ目トビウオ亜目トビウオ科ハマトビウオ属
学名:Cypselurus agoo agoo (Temminck and Schlegel)
英名:Opaquewing flyingfish [原], Japanese flying fish

地方名ホントビ(本トビ)、アキツトビウオなど。関東の市場や鮮魚店の店頭では、春先に入荷するハマトビウオ、春から初夏に入荷するツクシトビウオホソトビウオ、盛夏から秋にかけて入荷するトビウオという、流通量の多いトビウオ類4種を区別せずに「トビウオ」と表示していることが多いため非常に紛らわしいが、本稿で紹介する魚は、その中でも最も遅い季節になってから流通する標準和名トビウオ、言うなればトビウオの中のトビウオである。

さて、上の標本は全長約33cmの雄個体(白子を確認)から摘出した左右の「魚のサカナ」(産地の確認は失念)。「飛魚のトビウオ」は、一見してトビウオ科の「魚のサカナ」であると判断できる基本的な形。ただし烏口骨本体下縁の湾入部は浅い台形となり、またその上縁が直線的であるため、ある程度太め(『体高』が高い)な印象。「魚のサカナ」の後部域では烏口骨上縁のラインが『嘴』の先端部に向かって急激に落ちているように見える。射出骨と『背鰭』の作る隆起は、台形で比較的高い。肩甲骨孔は大きめの楕円形である。



日本近海に生息するトビウオ科の魚は30種を超えるが、流通に乗るのは上記したハマトビウオ属の4種類が主なものとなる。本稿の標準和名トビウオは、胸鰭の上から2軟条が不分枝であることから、4種類の中で比較的区別しやすいもの(ちなみに他の3種類は上から1軟条のみが不分枝)。「日本産魚類検索 第2版」の同定の『鍵』を慎重に辿り、1)胸鰭は長く、その先端(写真中段左赤四角)は臀鰭後端(同青線)を越える、2)側線に胸部分枝がない、3)腹鰭は長く、その先端(写真中段左青四角)は臀鰭起部(同赤線)を越える、4)臀鰭起部(写真中段左赤線)は背鰭第3軟条(同緑線)より後方にある、5)背鰭軟条数は12、臀鰭軟条数は11(背鰭軟条は臀鰭軟条より多い)、6)胸鰭の上から2軟条が不分枝(写真下段右)、7)胸鰭鰭膜は淡色で、明瞭な斑点はない(写真下段左)、8)背鰭に顕著な黒色斑がない(不顕著なものはある/写真中段右)などの形質からトビウオであると判断。

トビウオの頭部を正面から見ると断面は三角形に近い。

2011年9月に八王子総合卸売センター内、総市水産で購入したもの(当日は200円/匹)。この個体はネギ/大葉/ミョウガ/ショウガなど薬味をたっぷり散らしたタタキ風の刺身に。トビウオ類の刺身一般に言えることだが「脂の乗り」という言葉とは無縁のしっかりとした歯応えの身の中から爽やかな旨味が溢れ出てくる。非常に美味い。


【注】本エントリー初稿時に掲載していた東京都産の標本の写真は、入手時期や魚体のサイズから判断してトビウオではなく、ハマトビウオのものである可能性が低くないことが明らかになった(=初稿執筆当時は現在ほど詳細な同定をしていなかった)ため、今回の改訂をもって「お蔵入り」とさせて頂きます。

(7/25/12 全面改稿)