新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

54: オアカムロ

スズキ目スズキ亜目アジ科アジ亜科ムロアジ
学名:Decapterus tabl Berry
英名:Roughear scad, Redtail scad, Northern mackerel scad

高知産の体長約30cmの個体から摘出した左右の「魚のサカナ」。写真右は、写真左の右側の標本を反対側から拡大して観察したもの。「尾赤室(「ムロ」は魚偏に室と書く場合も)のオアカムロ」は、アジ科の中でもあまり大型にならないアジやムロアジの仲間のものが共有する基本的な特徴(肩甲骨がほぼ三角形/烏口骨の『背鰭』部分があまり高くならないこと/カーテン様の構造が烏口骨下部に広がることなど)を有している。また長くはないが、烏口骨の『嘴』先端が棒状に突出する。特に烏口骨下部のカーテン様構造の形などは、これまでに紹介してきた他のアジ科の「魚のサカナ」と形状が異なっているが、同時に以前紹介していたオアカムロのもの(下記参照)とすら異なる。もっと多数の標本を見ないとはっきりしないが、恐らく個体差が非常に出やすい部分であるのだろうと予想している(良く見てみれば、同一個体の左右の標本でも全く同じ形ではない)。

写真上右側の標本を擬鎖骨から外す前に撮影しておいたもの。肩甲骨の上部(赤四角)が「庇」のようにせり出しているのが分かる。また肩甲骨の先と擬鎖骨がの結合(青矢印の部分)は比較的強めだが、「魚のサカナ」と擬鎖骨を外すのには苦労しない程度。



「日本産魚類検索 第2版」の「同定の鍵」を辿り、1)腹鰭があり、背鰭棘部は皮下に埋没しない、2)第2背鰭基部より後方に側線直走部の全体を被う稜鱗(ゼイゴ)がある(写真中段右)、3)脂瞼は発達(写真中段左)、4)尾柄部に小離鰭がある(写真下段左の緑四角/ムロアジ類の特徴)、5)背鰭前方鱗域は眼の中央に達する(写真下段右の緑線)、6)胸鰭先端は第2背鰭起部下に達しない、7)体高は低い(体長の22.2%以下)、8)鰓膜後縁は鋸歯状という形質を確認してオアカムロであると判断。また標準和名の通り、尾鰭が赤い(写真中段右)のもオアカムロの大きな特徴。

2011年1月に魚喜日野店で購入(当日は同サイズ2匹で550円)。オアカムロは、元々旨味が多い上に、冬場は脂の乗りも良いのだが、幸か不幸かその味を知る人が余り多くないようで基本的には値段もリーズナブルという嬉しい魚。この個体は写真からも分かるように、全身が青緑に輝き、尾も鰓も真っ赤と一見して鮮度抜群であることが分かるもの。刺身で食したが当然ながら非常に美味。ムロアジ類なので少々血合い部分が大きいが、この鮮度なら全く気にならない。身質も良い。近くに住む親戚の家に「お土産」として持参したが、オアカムロは初めてだという伯父達にも大好評だった。

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本「図鑑」開設当時にアップしていた標本。鹿児島産。

上の写真の個体と比べると鮮度の違いが一目瞭然である。


(10/04/11 写真追加&改稿)