新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

63: イシダイ

スズキ目スズキ亜目イシダイ科イシダイ属
学名:Oplegnathus fasciatus (Temminck and Shlegel)
英名:Striped beakperch [原], Barred knifejaw, Striped beakfish, Japanese parrotfish, Rock bream

地方/流通名クチグロ(老成魚)、シマダイ(若魚)、サンバソウ(若魚)など。小田原産の全長35cmの活け〆個体から摘出した「魚のサカナ」。「石鯛のイシダイ」は、一見するとスズキ亜目の「魚のサカナ」にありがちな形にも見えるが、肩甲骨の全体的な形状、烏口骨の上方突起(『背鰭』)部分、更にはその本体下部と『嘴』部の間隙に広がるヒダ様の部分など、カゴカキダイメジナ科の「魚のサカナ」との共通点を数多く見出すことができる。非常にバランスが取れた、勇ましさをも感じさせる一品で、筆者の「お気に入り」の1つ。

写真上の左側の標本を拡大して観察。この標本の烏口骨下部のヒダ状部分には成長線がはっきり確認出来る。


日本近海に生息するイシダイ科の魚はイシダイとイシガキダイの2種のみで、体色がそれぞれ独特なので同定は容易。「検索」の「鍵」も、1)体に暗色横帯がある(写真下段左/雄の老成魚ではこの横帯が不明瞭になり口周辺が黒くなる。故に「クチグロ」)、2)背鰭軟条数が「17」(写真下段右)という2つの形質を確認するだけでイシダイと判断できる。ちなみにイシダイとイシガキダイは自然交雑する(「イシガキイシダイ」とも。ちなみに近畿大学が作出した人工交雑個体を「キンダイ」と呼んでいるのは有名な話)ことが知られているが、交雑個体は生殖能力がないので子孫を残せない。つまり「種」として成立しないので、当然「学名」などはない。

2011年4月に八王子総合卸売センター内、高野水産で購入(当日はキロ1,500円/約0.9kg)。3枚に下ろした身は刺身に、またアラは潮汁に。刺身にすると、コリコリした食感で非常にキメの細かい非常に優れた身質。脂の乗りと旨味のバランスも良い。非常に美味い。また引いた皮を湯がいてから細かく切り、おろしポン酢で和えた小品もなかなかの珍味。アラからは旨味たっぷりの非常に良い出汁が出るので、潮汁も非常に美味い。刺身を数切れご飯に乗せて、その上から潮汁をかけ、醤油を数滴垂らした後に小ネギをパラパラした「まご茶」風(わさびはお好みで)の丼は宴席の締めにも最高である。是非お試しあれ。

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写真上は本「図鑑」設置当時に紹介した千葉産の活け〆ものから摘出した標本。烏口骨下部のヒダ状部分の形状が少々異なる。八王子綜合卸売協同組合、憲芯で購入(キロ2,000円程度だったと記憶)。

(9/6/11 写真追加&改稿)