新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

323: ハシキンメ

キンメダイ目ヒウチダイ亜目ヒウチダイ上科ヒウチダイ科ハシキンメ属
学名:Gephyroberyx darwinii (Johnson)
英名:Blueberry roughy [原], Darwin's slimehead, Darwin's roughy, Finescale roughy, Big roughy, Darwin's red-fish

地方名ゴソ(沼津)、エノハ(小田原)、パン(尾鷲)、ヨロイウオ(高知)など。静岡県沼津産の全長約19cm(ただし尾鰭の先は一部欠損)の個体から摘出した「魚のサカナ」。右側の標本は烏口骨の『嘴』部分が折れてしまった。写真右は、写真左の左側の標本を反対側から観察したもの。「端金目/橋金目のハシキンメ」は、これまでに紹介したキンメダイ目の「魚のサカナ」の中では、イットウダイ科のスミツキカノコのものに最も似ているように思われるが、1)肩甲骨前縁の角度がより緩やか、2)肩甲骨孔が小さめ、3)烏口骨の『嘴』部が長めなどの相違点が挙げられる。少なくともキンメダイやフウセンキンメのものにはほとんど似ておらず、スズキ目の魚の「魚のサカナ」であると言われたら納得してしまいそうな形である。

「端金目のハシキンメ」では、烏口骨上方の『背鰭』先端部が尖らず、断ち切られたかの様な直線状で、その前縁には極小さな凹みがある(写真左)。同じような特徴はスミツキカノコのものでも観察されていたもの(ちなみにマツカサウオの「魚のサカナ」でも『板金を折り曲げたようになっている部分』の前縁は直線状である)。ハシキンメの耳石は平板上で四角形の独特の形(写真右)。



日本近海で生息が確認されているヒウチダイ科の魚は3属6種のみなので、同定は比較的容易。「日本産魚類検索」を開き、1)肛門は臀鰭の直前にある(写真下段左の青矢印)、2)肛門より前方の腹縁に稜鱗がある(写真下段左の赤四角)、3)腹部下縁に発光器はない(写真下段左)、4)背鰭に欠刻がある(=背鰭棘条が中央ぶ以降一度低くなり、後方でもう一度高くなる/写真中段右)、5)側線鱗は他の鱗よりわずかに大きい程度(写真下段右)などの形質を確認してハシキンメであると判断。ちなみにハシキンメの頭部は不透明で、正面から見ると上顎前縁が抉れていることが分かる(写真下)。

2012年3月の沼津釣行の帰途に立ち寄った、静岡県沼津市内浦にあるアキシン商店で購入(当日は300円/匹)。胸鰭や尾鰭の一部の棘条は(恐らく漁獲時に)先端が欠損。鱗は細かい上に固く剥がれにくい。また独特の香りがある(これは苦手な人は苦手かも知れない)。ただ鰓を見る限りなかなか新鮮だったので、今回は刺身と煮付けに。刺身にするとシコッとした固めの身質で、脂のりはさほどではないが、旨味は多く美味。煮付けにすると、やはり身はしっかりしている。身離れも良く、旨味も少なくない。こちらも美味い。ただ、煮付けの方はクセのような風味が目立つような印象。個人的には刺身の方が好み。

【追加情報】ハシキンメの学名を Gephyroberyx japonicus としているWEBサイトは多いが、この学名は現在はシノニムになっている。