新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

158: ミノカサゴ

スズキ目カサゴ亜目フサカサゴミノカサゴ亜科ミノカサゴ
学名:Pterois lunulata Temminck and Schlegel
英名:Butterflyfish [原], Luna lion fish, Japanese lionfish, Dragon's beard fish

しばらく「小物」が続いていたので、今回はちょっと大きめサイズのものをご紹介。

神奈川県城ヶ島産の体長約30cmの個体(釣リの獲物)から摘出した標本。肩甲骨下部と擬鎖骨がかなり強固に融合していたために擬鎖骨付きで調製したが、このような「融合」はフサカサゴ科のものでは非常に珍しい。肩甲骨から烏口骨の前半分までは典型的なフサカサゴ科の「魚のサカナ」の形であるが、メバル類や他のカサゴ類のものでは明瞭に観察できる烏口骨上部の突出部分(『背鰭』に相当する部分)が「蓑笠子のミノカサゴ」には存在しないのが大きな特徴(写真左)。また烏口骨の『嘴』部先端が、アイナメ亜目の「魚のサカナ」に見られるように「ビーバーの尾っぽ」風に広がっているのもフサカサゴ科では初登場(写真右の紫丸/ただしアイナメ亜目のものには上述した『背鰭』もしっかり存在する)。

写真左を良く見ると射出骨との結合が切れた辺りから烏口骨が大きく写真前方によじれていることが分かる。このことから判断すると、『ビーバーの尾』の少なくとも写真手前(左)側は烏口骨上部の突出(『背鰭』)部分が変化したものなのだろう。少なくとも烏口骨先端の頑丈な形や、擬鎖骨との強固な結合という特徴が、ミノカサゴの巨体な胸鰭をしっかり支えるために進化してきたのは間違いないように思われる。

射出骨部分の拡大写真。第2射出骨は真っすぐではなく、少々よじれながら伸びている。


外見が良く似たハナミノカサゴとは、1)背鰭と臀鰭の軟条部と尾鰭に明瞭な黒斑点が多数ないこと(あっても不明瞭で小斑がわずかにある程度)、2)頭部腹側に赤〜茶褐色の明瞭な縞模様がないこと(写真下段右)、3)頭部の皮弁が大きくならないことなどで区別できる。ミノカサゴの仲間の各鰭の棘条は針のように鋭く尖っている上に毒があるので、釣れた場合などには要注意。ちなみに毒自体はタンパク質で熱変性してしまうので、もし刺された場合は火傷しない程度の熱さ(40〜50℃くらい)の湯の中に手をしばらく浸けておくと痛みが和らぐらしい。

城ヶ島産シリーズ」第3弾。ネットや本でミノカサゴの食味に関して調べると「美味」と「不味」が混在しているので、どちらが正しいのか自分の舌で確かめたいと常々思っていた。ということで、実はこの魚(の煮付け)だけは少量を口にしてみたのだが、ヤリヌメリ由来と思われる強烈な刺激臭があっという間に口いっぱいに広がり、すぐに肉片を吐き出さざるを得なかった、、、本当に残念。一噛みした感じでは、身質は同じフサカサゴ科のメバルカサゴにやはり似ているように思われたが、旨味に関してはコメントのしようがない。また次の機会にということで。