新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

173: キタマクラ

フグ目フグ亜目フグ科キタマクラ
学名:Canthigaster rivulata (Temminck and Schlegel)
英名:Scribbled tody [原], Brown-lined puffer, Doubleline toby, Maze toby, Rivulated toby, Tail-barred pufferfish

静岡県熱海で釣られた体長約10cmのオス個体(下記参照)から摘出。射出骨が大きく目立ち、その間隙の孔が肩甲骨孔と区別しにくいというフグ科の「魚のサカナ」の基本形(こちらの「フグ科」と記してあるものを参照)であるが、その射出骨の下の肩甲骨、肩甲骨孔とも比較的大きめ。また肩甲骨孔の下部は完全に閉じていない(線状の軟骨があった可能性はある)。また射出骨の間隙には、ヒガンフグ程しっかり覆われてはいないものの、「薄膜」もしくはその名残(?)が存在(写真左の左側標本が分かりやすい)。この写真では烏口骨後端の『嘴』部分が長く曲線的に伸びているように見えるが、横から見ると実はこの部分は平たく広がっている(下の写真参照)。また烏口骨上方の突出部は内側に大きく曲がり『爪』のよう立ち上がっている(写真右の右上部の「影」に注目)。

「北枕のキタマクラ」を横から見ると、特に烏口骨の部分がアーチ状になり、激しく波打っていることが分かる。


体側にある2本の暗色縦帯がキタマクラの特徴だが、この個体ではかなり薄い。顔面や胸鰭の周り(写真下段左)や、腹部正中線(写真下段右の下部)に青色の婚姻色がはっきり出ているのでオス個体であることが分かる(ちなみに釣られたのは10月半ば)。標準和名の由来は亡くなった人の頭を北に向ける「北枕」、つまり「食べたら死ぬ」という意味であるのは明白。ネットなどで調べた限り、実際の毒性はそこまで強くないようにも思えるが、とにかくフグ毒に関しては素人判断は非常に危険。確実なのは皮は猛毒、肝臓と腸は弱毒。肉と、フグ類には珍しく卵巣は無毒とされているようだが、それでも「フグの衛生確保について」という厚生省環境衛生局長通知(最終改正は平成22年9月10日)では、キタマクラの販売は認められていない。素人が料理して食べることは絶対に止めるべき。ということで、この個体も「魚のサカナ」を摘出した後は、ビニールで厳重に包んで処分した

今回から数回続く「熱海シリーズ」は、職場の関係者が熱海付近で釣った魚を再度「魚のサカナ」の調製用に提供してくれたもの。多謝!

注:ちなみに筆者がフグ類の「魚のサカナ」を調製する時は、万が一のことも考えて『フグ科専用』にしたまな板/包丁/キッチン鋏/包丁などを使用している。もちろん使い捨てのビニール手袋を着用。