新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

185: ヨリトフグ

フグ目フグ亜目フグ科ヨリトフグ
学名:Sphoeroides pachygaster (Müller and Troschel)
英名:Slackskinned Puffer [原], Blunthead puffer, Smooth pufferfish, Bottlefish, Balloonfish

地方名みずふぐ(各地)、ちょうちんふぐ(愛知県三河湾)。愛知県一色産の全長約13cmの個体から摘出した左右の「縒糸河豚のヨリトフグ」。大きな射出骨の間隙の孔が、小さめの肩甲骨に開いた肩甲骨孔(一番下の孔)の大きさとほぼ同じという、一見するとフグ科の「魚のサカナ」の基本的パターン。ただし、第4射出骨の後部(あるいはそれに結合した別の骨?)が後方に大きくせり出すのは大きな特徴(同じような「突起」は以前紹介したヒガンフグの「魚のサカナ」でも観察されているが、ヨリトフグのものほど大きくない)。射出骨の作る間隙を埋める薄膜は、今回は左側の標本の最後尾のもののみに存在。写真右はその左側の標本を反対側から見たところ。烏口骨後端の『嘴』部分は比較的長めで、その幅はかなり太い。

写真上右側の標本を横側から観察したところ。上記した烏口骨の『嘴』部分が、「魚のサカナ」本体の面に対して垂直に、まるで『鍬』の様に太く広がっていることが分かる。


上記した「地方名」もなるほどと思わされる、皮が厚く非常にブヨブヨした体。ヨリトフグの同定は比較的簡単で、「日本産魚類検索 全種の同定 第2版」によると1)体の断面が丸く、側線がある、2)体表に小棘がない、3)体に極細微線が密に走る(写真下段左)という形質を区別すれば良い。

厚生労働省のサイト「自然毒のリスクプロファイル:魚類:フグ毒」を含め、一般に『無毒のふぐ』と認識されており、厚生省環境衛生局長通知「フグの衛生確保について」内のリストでも、ヨリトフグの筋肉、精巣、皮は販売可能とされている。しかしながら「沖縄近海産フグの毒性調査: Toxicity of puffers from Okinawa」という沖縄県衛生環境研究所の調査報告書(こちらからPDFのダウンロード可能)によると、6検体中1検体のみであるとはいえ一般には無毒と考えられている肝臓に毒が検出されている。ここからも分かるようにフグ毒に関しては個体差/地域差もあるため、素人判断は非常に危険。フグ料理の専門家以外が処理/料理したものを食べることは絶対に止めるべきである。それでも食べたいという場合は自己責任で(万が一の場合も当方は一切責任を持ちません)。

名古屋出張のついでに足を伸ばして再訪した愛知県一色漁港「三河一色さかな村」で、他の様々な魚と一緒に「トレイ一盛り数百円」で入手したもの。ということで、今回から10エントリーほど、同じ日に購入した一色産の魚の「魚のサカナ」を紹介する予定。