新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

186: アオヤガラ

トゲウオ目ヨウジウオ亜目ヘラヤガラ上科ヤガラ科ヤガラ属注1
学名:Fistularia commersonii Rüppell注2
英名:Flutemouth [原], Bluespotted cornetfish, Cornetfish smooth flutemouth, Smooth flutemouth

愛知県一色産の体長約45cm(尾鰭中央の軟条が長く伸びた針状構造は除く)の個体から、射出骨と胸鰭の軟条付きで摘出した標本。アカヤガラのものと比べると、1)長く伸びた烏口骨の一部の先端(後端)部分が流線型に伸び切らず、えぐれたようになっていること、2)第2から第4射出骨が比較的長く、その間隙の孔も細長いために「魚のサカナ」の本体部分(肩甲骨+烏口骨の本体部)全体がより細長く見えることなどが相違点として挙げられる。また小さな第1射出骨が肩甲骨に張り付くように存在しているのはアオ/アカの両ヤガラに共通の特徴。

別の個体から取り出した「青矢柄のアオヤガラ」の標本を裏表から観察したもの。先のアカヤガラのエントリーで述べた「肩甲骨と烏口骨の境目」の問題だが、上の写真に書き加えた赤矢印付近に明瞭な境目(軟骨質部分)が認められることから、この辺りが肩甲骨と烏口骨の境目となりそう。即ち昔の文献の記述の方が正確であったことになる(「アカヤガラ」のエントリーの中央付近にある色着けした写真で言えば、左側が正しいということ)。

日本近海に生息するヤガラ科の魚はアオヤガラアカヤガラの2種類しかないので、同定は容易。両者の形態の比較に関しては下記参照。

愛知県一色漁港にある「三河一色さかな村」で購入(胃の中には小型のイカナゴがいっぱい入っていた)。今回は一緒に入手したアカヤガラとともに塩焼きにして味比べ。ネット上や書籍などではしばしば「アオヤガラは不味」との記述を見かけるが、実際のところアオヤガラだけを食べればはっきり言って美味。小型であっても上品な旨味はあるし、身質も悪くない、、、が、いざアカヤガラと食べ比べてしまうとアオヤガラの完敗。アカヤガラの身の特徴である「エビのような濃厚な旨味」は、残念ながらアオヤガラにはない。とはいえ、あくまでも「比較の問題」であり、アオヤガラは決して不味い魚ではないことを改めて強調しておきたい。


アオヤガラアカヤガラの比較】

写真1

この写真では分かりにくいが、アカヤガラ(上)は両目間隔が深く凹むが、アオヤガラ(下)はその部分が比較的平坦。また名前の通り、アカヤガラの体色は赤であるのに対し、アオヤガラは青みの掛かった褐色(生時はもっと青っぽいらしい)。

写真2

アカヤガラ尾柄部にある側線鱗は大きく、鋭い後向棘があるが、アオヤガラでは側線鱗自体が小さく、鋭い後向棘はない。

写真3

アカヤガラの尾鰭は白〜淡赤色だが、アオヤガラの尾鰭はオレンジ色。また尾鰭中央の軟条が長く伸びた針状構造は、アカヤガラでは白っぽいが、アオヤガラでは濃青〜黒色。

注1:「日本産魚類検索 全種の同定 第2版」や「新訂原色魚類大圖鑑」では、トゲウオ目ヨウジウオ亜目ヤガラ科になっている。

注2:FishBaseのエントリー F. commersonii のCommon Names 欄を見ると、和名では何故かAka-yagaraと掲載されているが、descriptionの欄の「臀鰭/尾鰭はオレンジで根元は透明になる」というのはアオヤガラに特徴的な形質(上の写真3参照)なので、これは明らかな間違い。ちなみにエントリー F. petimbaの同欄には「F. commersoni には存在しない(体側)正中線に沿った骨板列あり」というアカヤガラの特徴(上の写真2参照)が記されているが、Common names 欄にはAka-yagara, Ao-yagaraの両者が併記されている。