新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

216: オクカジカ

スズキ目カジカ亜目カジカ上科カジカ科ギスカジカ属
学名:Myoxocephalus jaok (Cuvier)
英名:Plain sculpin [原]

地方名しらみかじか、あいかぎ(北海道)。北海道産の体長約35cmの個体から巨大な射出骨付きで摘出した左右の「魚のサカナ」。アルコール処理前。「オクカジカ(漢字不明)のオクカジカ」は全体に軟骨質で、大きな肩甲骨孔の開いた三角形に近い肩甲骨の上に第1射出骨と第2射出骨のほとんどの部分が乗り、第3および第4射出骨を含めて肩甲骨/烏口骨間に入り込むような形で両骨を分断していることなど、これまで摘出してきた中では、やはり同じカジカ科ギスカジカ属のギスカジカのものに最も良く似ている。ただし、オクカジカのものでは、1/2番目、および2/3番目の射出骨が接しているところだけでなく、1番目の射出骨の肩甲骨側(写真右の赤丸/ギスカジカのものにもこの孔はあるが、もっと小さく、辛うじて確認できる程度)、更には烏口骨の本体中央部にも孔が開いている。また射出骨の作る上方のラインが、ギスカジカのものほどは曲線的でないような印象を受ける。

【写真左】一番上の写真、左側の標本を裏側から観察したところ。アルコール処理前。肩甲骨/烏口骨を繋ぐ、射出骨の下の軟骨がギスカジカのものよりも太いように見える。【写真右】同じ標本をアルコール処理後に観察。軟骨質とは言え、それなりに石灰化(骨化)しているので、烏口骨の『嘴』部などは多少収縮しているが、全体的には乾燥後も薄くてシワシワの状態にはならない。烏口骨本体の孔がはっきり確認できる。

今回「魚のサカナ」を摘出した個体を横から(左)と腹側から(右)。


日本産のカジカ科の魚は元々種類が多い上に、地方名も数多く、更に同じ地方名が別種の魚を指す場合もしばしばあったため、その同定は専門家(もしくは慣れている人)以外にはなかなか難しい。今回の魚も、1)体側下部に斜めの鱗列なし、2)頭部背面には小さい骨質突起が無数にある(写真上段左)、3)前鰓蓋骨は最上棘が最大で、内側は鋸歯状でない。この棘はまっすぐ伸び、その後端は鰓蓋後端を越えない(写真上段右)、4)第1背鰭は9棘。各棘は鰭膜で連続し、第2背鰭と近接する、5)腹鰭は1棘3軟条で後端は肛門に達しない、6)側線鱗は皮下に埋没し、尾柄部まである(写真下段左の赤矢印が最後端)、7)後頭部には鋭い棘や皮弁がなく、2対の鈍い棘がある(写真上段左の赤丸)、8)下顎は上顎より前に出ない、9)左右の鰓膜は癒合し、峡部を横切る皮褶を形成する、10)臀鰭に遊離棘なし、11)頭部は縦扁し(=平たい)体は丸い(写真下段右は胴部の断面)、12)口は大きく、その後端が眼の後端を越える、13)尾鰭後縁は白くない(写真下段左)という形質を確認することで、「検索」的にはようやく「オクカジカ」に到達した次第。ちなみに体側背面に極小の鱗様構造は散在したが、これらが鋸歯縁をもっているかどうかは確認できなかった。

「トゲカジカ/なべこわし」と表示された店頭のトロ箱(300円/匹)に、腹を上に向けた状態で何匹か並べられていたところから、急いでいたこともあって何も考えずに大きめのものを1匹引き抜いたもの。当然のことながら当初は「トゲカジカ」のつもりだったが、帰宅してから良く見ると白いラインがウネウネと動き回ったかのような模様があり(写真上/これが地方名「しらみかじか」の由来?「唐草模様」のようにも見える)、尾鰭の先端も白くなかったことから、上記した通りに形質を調べ直して「オクカジカ」であることが判明。そこで「オクカジカ」をネット検索すると、『不味』という記述ばかりで、どうやら『ババ』を引いてしまったか、、、という気分になったのは事実。とは言え「どちらにしてもオクカジカはこれまで食べたことがない訳だから味を確認しなくては」と気を取り直して定番(?)の味噌汁に。実際食べてみた感想としては、確かに旨味がさほどあるわけではないが、身はホロリと取れて食べやすいし、オクカジカだけを食べるのであればそれほど悪くないんじゃないか?と思った次第。ちなみに、今回の魚の腹の中には半分消化された「めろうど/おおなご」サイズのイカナゴ(と思われるもの)が5〜6匹入っていた。

注:良く確認しなかった自分のミスでもあるので、この鮮魚店を責める気持ちは毛頭ない。だいたい彼らもオクカジカが紛れ込んでいることに気づいてすらいなかっただけだろうし。