新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

175: スズメダイ

スズキ目スズキ亜目注1スズメダイスズメダイ亜科スズメダイ
学名:Chromis notata (Temminck and Schlegel)注2
英名:Whitesaddled reeffish [原], Pearl-spot chromis, Damselfish, Coral fish

地方名あぶってかも(炙って鴨、炙って噛も/福岡)、おせんごろし(和歌山)。静岡県熱海産の体長約12cmの個体(釣りもの)から擬鎖骨付きで摘出。「魚のサカナ」の烏口骨と擬鎖骨の結合部は直線的で、またその途中にほぼ円形の大きな孔が開いている(実際には「烏口骨下部のカーテン様部分が広い」とでも書くべきだが)。肩甲骨孔は大きい。烏口骨上方の突起部分(『背鰭』)に小孔が開き、『嘴』部分の先端は非常に短く見える。

擬鎖骨から取り外した反対側の標本。肩甲骨と烏口骨の結合部が少々離れてしまっているが、「雀鯛のスズメダイ」のほぼ三角形の烏口骨、直線的な烏口骨下部、短い『嘴』の先端部分、更には『背鰭』部分に開いた小孔をはっきり観察することができる。また肩甲骨孔は上の標本よりも丸い。


スズメダイ科の魚は種類も多く、特に特徴的な体色や模様のない種をすぐに同定するのは難しい。今回も何時ものように「日本産魚類検索 全種の同定 第2版」の同定の鍵を辿り、1)主鰓蓋骨などの後縁に長い棘列がない、2)眼窩後半内側に乳頭状突起がない、3)尾鰭上下端の前尾鰭条が棘状(上下各2本/写真下段左)であることからスズメダイ亜科であることが確定。更に、4)眼下骨系の縁辺が円滑、5)体色はほぼ一様で黒色横帯なし、6)眼上部から後頭部の各鱗に付属小鱗なし、7)胸鰭基底に大きな黒色斑あり(写真下段右)、9)背鰭軟条部後端は尖り、軟条数は13、10)尾鰭先端は糸状に伸びない、12)体高は体長の約43%で熱海産、などの形質/条件から「スズメダイ」にたどり着いた次第。ただし「新訂原色魚類大圖鑑」にもスズメダイの特徴の一つとして挙げられ、英名の由来にもなっている「尾柄背面の乳白色の斑紋」はこの個体では観察できなかった。単なる個体差なのだろうか?

今回もらったのは1匹だけだったが、何とか刺身に。脂が乗り甘みを感じさせ、また旨味も多くなかなかの美味。ただし人によっては小骨が気になるかも知れない。博多辺りではスズメダイの干物や塩漬けをあぶったもの(上記した地方名参照)が名物であると聞いているが、まだ食べたことはない。


【注1】「日本産魚類検索 全種の同定 第3版」では、スズメダイは「スズキ目スズキ亜目」として掲載されているが、Joseph S. Nelsonの「Fishes of the World, 4th Edition」(2006) では「スズキ目ベラ亜目」として掲載。

注2:「日本産魚類検索 全種の同定 第2版」と「新訂原色魚類大圖鑑」では、スズメダイの学名はChromis notata notata (Temminck and Schlegel)と亜種名付きで掲載されているが、FishBaseによると現時点でこの学名(およびミヤケスズメダイChromis notata miyakensis Moyer & Ida) は Chromis notata (Temminck and Schlegel) のシノニム扱い。本稿ではFishBaseの記載に準じた。