新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

282: アオミシマ

スズキ目ワニギス亜目ミシマオコゼ科アオミシマ属
学名:Xenocephalus elongatus (Temminck and Schlegel)
英名:Bluespotted stargazer [原]

新潟産の全長約40cmの抱卵雌個体から摘出した左右の標本。肩甲骨/烏口骨本体の下部、更には烏口骨の『嘴』部分の下縁が擬鎖骨と広い範囲で強く結合していたが、固定後に注意しながら多少力をかけることで擬鎖骨から分離できた「魚のサカナ」。射出骨付き。「青三島のアオミシマ」は、これまでに紹介したミシマオコゼ科のミシマオコゼキビレミシマのものと肩甲骨部分ではそれなりに似ているものの、烏口骨の形状は全く異なる。特に『嘴』部は棒状にならず(決して標本の調製ミスではない)、擬鎖骨と結合していた部分が直線上になっている。また射出骨が前側の方がより盛り上がっているためか、各射出骨の間隙にある孔は前方の方が大きい。肩甲骨孔は楕円に近い。全体的に見て、非常に個性的な形状であると言える。

写真上左の左側の標本を擬鎖骨から外す前に撮影したもの。擬鎖骨棘(赤丸)はミシマオコゼはおろか、キビレミシマよりも更に短く痕跡的であるため、下の写真で示すように体の外からではあまり目立たない。



日本近海に生息するミシマオコゼの仲間は3属7種類。その内、背鰭が1基であるのはアオミシマとサツオミシマのアオミシマ属2種のみで、さらに両者は体型も体色も大きく異なるので同定は比較的容易。念のため「日本産魚類検索 全種の同定 第2版」の『鍵』を辿り、1)背鰭は1基(写真下段右の緑矢印が背鰭の起点)、2)擬鎖骨棘は不明瞭(写真中段左および下段右の赤丸)、3)胸鰭基底上方に皮弁がない、4)背鰭は軟条のみからなる、5)体の斑点は褐色(写真下段右)、6)胸鰭は22軟条などの形質を確認してアオミシマであると判断。また「新訂原色魚類大圖鑑」に記載されている、7)頭骨背面に放射状の溝がある(写真下段左)、8)口唇と鰓蓋の後縁は平滑(写真中段右の赤矢印)、9)眼隔域の湾入部は広く短い(写真中段左)、10)成魚の下顎前方に骨質性隆起あり(写真中段左右の緑四角/実際には下顎から骨が伸びている)、11)背鰭と臀鰭の基底は長い、12)皮下埋没鱗は列をなさない、13)側線は側面背部にある(写真下段右)などの形質も確認できた。

角上魚類日野店の対面販売コーナーで、アオミシマばかり7〜8匹入っていたトロ箱から購入(当日は200円/匹)。店頭表示は「ウシガンコウ」であったが、同店では恐らくこの名前(もしくは「ウシガンコ」)はミシマオコゼ類の総称として使われていると思われる。今回はなかなか新鮮な個体だったので、3枚に下ろし一部を生で試食。多少柔らかめだが程々の身の固さで、旨味も少なくない。残りは塩&胡椒を振って唐揚げに。少々水っぽいが旨味もちゃんと感じる。ネット上や書籍の情報では「不味」とされていることも少なくないが、個人的には生でも熱を通しても決して悪くないと思った次第。もしかしたらアカヤガラアオヤガラの場合と同様に、味の良いミシマオコゼなどと比較して「不味」ということにされてしまっているのかも知れない。


それにしても、、、の「御面相」ですな。