新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

203: ヨロイイタチウオ

アシロ目アシロ亜目アシロ科シオイタチウオ亜科ヨロイイタチウオ
学名:Hoplobrotula armata (Temminck and Schlegel)
英名:Snubnose brotula [原], Armored brotula, Armoured cusk

地方名:ひげだら(関東/三河湾)、ほうかいぼう(一色)、あわだち(新潟)など。愛知県三河湾一色産の体長約40cmの個体から射出骨付きで摘出した左右の標本だが、魚体のサイズに比して「魚のサカナ」のサイズは小さめな印象。肩甲骨の前側先端は鋭く尖っており、また肩甲骨孔は縦に細長いスリット状。『前方後円墳』のようにも見える大きめの射出骨は4個で、肩甲骨の前側上方にある突き出し部分は肩甲骨の一部であるが、ここまで巨大なものは中々珍しい。烏口骨の形は更に特徴的であり、その先端が3つの枝に分かれ三角形に太く広がる(ちなみに一番上の枝がこの「図鑑」で言うところの『背鰭』部になるはず)。写真右は、写真左の右側の標本を反対側から観察したところ。「鎧鼬魚のヨロイイタチウオ」全体としてみると、尾鰭がヒラヒラした『金魚』のようにも見える(個人的にはオランダシシガシラが心に浮かんだ)。

上述した通り「魚のサカナ」は比較的小さいが、その分(?)耳石は大きく、長さが約1.7mmもある。


今回の魚は、1)吻にひげがない、2)上および前鰓蓋骨に強くて長い骨がない、3)腹鰭(これが「ひげ」のように見えるために地方名「ヒゲダラ」)は2軟条で、その起部は眼の直下付近、さらに後端は鰓蓋後端を越えない、4)体側鱗の配列は普通、5)背鰭には顕著な斑紋はなく、その起部は胸鰭の中央部付近、6)前鰓蓋骨に3棘あり、7)背側が茶褐色で腹側は淡色、8)吻端は角張るなどの形質から、ヨロイイタチウオであると判断。

三河一色さかな村」の高橋水産で購入したもの。今回はほぼ同サイズのヨロイイタチウオ3匹が盛られて1皿900円だったが、実は関東の市場などではキロ数千円することも珍しくない知る人ぞ知る高級魚。八王子の卸売市場にも入荷しているのを度々見かけていたが、一般人にはなかなか手を出しにくい価格であることもあって、実は今回が初体験。ということで、今回は定番と思われる昆布締め、刺身、そして「一色価格」でなければ考えもしなかったであろう鍋の材料に。3枚に下ろしたところ、確かに身は柔らかめであったがブニョブニョという訳ではなく、そのまま刺身で食しても旨味たっぷりで非常に美味。また8時間ほど昆布締めにしたものは、身の水分が程よく抜ける上に、昆布からの旨味が加えられることもあって堪らない味に。はっきり言って大変な美味。連れ合いの実家の忘年会でも食卓に乗せてみたが、あっという間に皿の上から消えてしまった。もちろん鍋にしてもかなりの美味だったが、残念ながら「昆布締め」ほどの感動は得られなかった。ネット上の評判通り、この魚の料理法は「昆布締め」に尽きるのかも知れない。

注:そもそも一般には殆ど知られていない魚であると思われるが、標準和名よりもこの地方名の方がまだ『通り』が良いかも。ただしマダラやスケトウダラなどタラ科の魚と直接の類縁関係はないのでご注意。

(10/04/11 一部改稿)