新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

266: ホシササノハベラ

スズキ目ベラ亜目ベラ科カンムリベラ亜科ササノハベラ属
学名:Pseudolabrus sieboldi Mabuchi and Nakabo
英名:Bambooleaf wrasse [原; ただしアカササノハベラと共通]

石川県能登島産の、全長約18cmの個体から摘出した標本。写真右は、写真左の右側の標本の拡大図。「星笹葉倍良のホシササノハベラ」は、「額」に相当する部分の直下前縁が多少抉れ気味になるなど、肩甲骨側に関しては他のベラ科の「魚のサカナ」にもしばしば見られる特徴を有しているが、烏口骨側の形状はやはり独特のもの。烏口骨本体後部が上下から湾入している(特に下部側は深い)ために、烏口骨本体と『嘴』部を繋ぐ部分がかなり細くなり、また本体の下部後縁が尖る。また『嘴』部自体もかなり細い。

写真上の左側の標本の烏口骨の一部を拡大。三角形にせり出した烏口骨上方の『背鰭』部の頂点部分が、更に針状に上方向に突出する。また『背鰭』の背縁に相当する部分にはいくつかの小孔が開く。



「日本産魚類検索 第2版」の「同定の鍵」を辿り、1)側線は体側後部で中断しない(写真中段右/写真では見にくいが緑矢印の位置でも体躯背部と尾柄部の側線が繋がっている)、2)背鰭は9棘11軟条、3)上顎前部に著しく前方へ向かう門歯状歯がない(写真中段左)、4)側線は体側後部で急に下降する(写真中段右)、5)体長は体高の6倍未満、6)吻は著しく突出しない、7)両唇は肥厚しない、8)下顎に切れ込みがない、9)口は短い筒状でない、10)側線有孔鱗数は25、11)前鰓蓋骨後縁は円滑(写真下段左)、12)背鰭第1・2棘の鰭膜は伸長しない、13)頬部に数列の鱗がある(写真下段左)、14)側線中央部の有孔鱗の側線管は分枝する、15)側線上方横列鱗数は3(写真下段右)、16)頭部最下部の暗色縦線は胸鰭基部に達しないように見える(写真下の赤矢印/非常に判り難かったので、画像のレベルやコントラストをかなり調整してある)、17)体側背部(=側線より上)に白色斑がある(写真中段右)などの形質からホシササノハベラであると判断。今回の魚では、以前は同種「ササノハベラ」とされていたアカササノハベラ Pseudolabrus eoethinus (Richardson) と見分けるための最重要ポイントである「形質16」(ちなみにアカササノハベラの暗色縦線は胸鰭基部に達する)が明瞭でないが、写真で見られるような鰓蓋下部の「虫食い模様」はアカササノハベラには現れないため、両種を区別する良いポイントの1つとなる

直前のエントリー同様、能登島の民宿「若林荘」の女将さんが刺し網で捕獲した獲物の内の1匹。網を引き上げた時には既に死んでおり、そのためか少々磯臭かったこともあって今回は食していないが、ネット上では「美味」という記述も散見される。

【注】更に付け加えれば、ホシササノハベラは日本海/太平洋ともに生息するが、アカササノハベラは太平洋にしか生息しないとのこと。つまり今回の魚は日本海産=ホシササノハベラの可能性がより高いということになる。