新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

265: イシガキダイ

スズキ目スズキ亜目イシダイ科イシダイ属
学名:Oplegnathus punctatus (Temminck and Schlegel)
英名:Rock porgy [原], Spotted knifejaw

地方名ガラサーミーバイ(沖縄)、クチジロ(雄の老成魚)など。石川県能登島産の全長約15cmの小型個体から摘出した左右の「魚のサカナ」。「石垣鯛のイシガキダイ」の形は、近縁のイシダイのものに全体的に良く似ている(故に、イシダイの項でも述べた通り、カゴカキダイメジナ科の「魚のサカナ」との共通点も多い)が、1)肩甲骨孔が比較的小さく、角の丸い三角形、2)肩甲骨/烏口骨の上縁が滑らかな曲線となること、3)烏口骨の上方突起(『背鰭』)部分がより垂直方向に立ち上がった印象で、その前縁は先端まできれいな楕円形に湾入すること、4)烏口骨本体下部と『嘴』部の間隙にあるヒダ様構造がより大きく広がる(=烏口骨本体下部の後縁があまり湾入しない)こと、5)烏口骨の『嘴』部を貫く「筋」がより直線的であることなどを、相違点として挙げることが可能。正直に告白すると、イシダイのものとの相違点を挙げるのが困難なほど、形が酷似した「魚のサカナ」が出てくるものだと予想していた。正に「嬉しい誤算」である。


日本近海に生息するイシダイ科の魚はイシガキダイとイシダイの2種のみで、更に体色がそれぞれ独特なので同定は容易。この個体は、1)体に黒色斑点が密に分布する(写真下段左/ちなみに老成魚ではこの斑紋が不明瞭になり口周辺が白くなる。故に「クチジロ」)、2)背鰭が12棘15軟条であることからイシガキダイであると判断。ちなみに写真は水揚げ直後でまだ生きている時のもの。またイシダイとの交雑種に関しては「イシダイ」の項をご参照頂きたい。

一般にイシダイよりもイシガキダイの方が南方系の魚とされているが、近年イシガキダイを原因魚としたシガテラ毒素による食中毒が、沖縄県だけでなく、九州や本州でも報告され問題になっている(こちらを参照)。このデータから発生件数を多いと見るか少ないと見るかは人それぞれだが、客観的事実として「100%安全保証」という訳ではないので、イシガキダイを食べる場合は自己判断の上、自己責任で(万が一の場合も当方は一切責任を負いません)。

能登島の民宿「若林荘」の女将さんが刺し網で漁獲した「前浜もの」を、お願いして分けてもらったもの(ありがとうございました!)。今回は自宅まで持ち帰った後に、塩だけで煮る「マース煮」に。しっとりとキメの細かい身質から溢れ出てくる旨味が堪らない。非常に美味い。また数年前に食べた「釣りもの」の刺身は文句なしの絶品。この時はイシダイの刺身と食べ比べたが、特に旨味の量ではイシガキダイの圧勝であった。極めて美味。


【参考】「シガテラ中毒」に関して、沖縄県衛生環境研究所の「シガテラ中毒について」というページは一読の価値あり。下の方にリンクが貼られている「シガテラに関する言い伝えの検証」によると、検証した4つの「言い伝え」全てにおいて否定的な結果が得られたとのこと。