新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

264: ニザダイ

スズキ目ニザダイ亜目ニザダイニザダイ
学名:Prionurus scalprum Valenciennes
英名:Sawtail [原], Scalpel sawtail

地方名サンノジ(三の字、さんのじ/尾柄部の暗色斑の大きなもの3つが「三」に見えることから)、三公(さんこう)。三重県産の全長約32cmの活〆個体から摘出した左右の「魚のサカナ」。写真右は、写真左の左側の標本を拡大して反対側から観察したもの。「仁座鯛/似座鯛のニザダイ」の肩甲骨の形状、および烏口骨との接合部の様子(接合角など)は、同じニザダイ亜目に分類されているツバメウオのものと良く似た印象。また烏口骨本体の下縁が小さく湾入しているが、これも同じニザダイ亜目に属するアイゴゴマアイゴのものにも見られる特徴。烏口骨上方の突起部の立ち上がりやその後部(丁度『背鰭』に当たる部分)もアイゴ類のものと雰囲気が似ているように見える。ただし、これまで紹介してきた他のニザダイ亜目の「魚のサカナ」は、烏口骨本体下部から『嘴』に向かうライン(=小湾入部より後側)が大きく湾入していたが、「仁座鯛のニザダイ」ではこの部分がカーテン様に広がっている。更に『嘴』部が非常に細く、またその先端部が「矢印」あるいは「釣り針の返し」のようになっているのも特徴の一つ。

写真上・左側の標本の烏口骨本体下部を拡大。烏口骨本体下縁の小さな湾入部の直上には極小の孔が10個程度(比較的大きいものが5つ)開いている。またこの標本の『嘴』に近い部分(写真の左下側)では「成長線」がはっきり観察できる。

同じ標本を擬鎖骨から取り外す前に撮影しておいたもの。「魚のサカナ」の烏口骨本体と擬鎖骨が接しているライン上に真円に近い孔(上記した烏口骨本体下縁の小湾入部を作るもの)が開いているのはスズメダイ科の「魚のサカナ」を彷彿させるが、あくまでこれは「偶然の一致」(ニザダイスズメダイ類は亜目のレベルで異なる、かなり遠縁の魚である)。また擬鎖骨と烏口骨の『嘴』部先端が接している部分の、擬鎖骨側に大小様々な孔が開いているのは珍しいと思われる(要確認)。


尾柄部に4つ並んだ暗色斑/骨質板(写真下段左)からニザダイであることが一目瞭然なので、正直なところ「検索」の必要もなかったが、その先の 1)背鰭は9棘23軟条(写真下段右/8棘以上)、2)臀鰭は3棘21軟条(3棘以上)、3)腹鰭は1棘5軟条(5軟条)という形質から「ニザダイ」に辿り着くことを一応確認した。ちなみに暗色斑の中の骨質板は鋭いナイフのようになっており、釣り上げた時や下ろす際には手を切らないように注意すべし。

愛知県岡崎市で50年以上開かれているという「二七市」で購入(当日は500円/匹)。一応活け〆ものであったが、内臓の処理はされておらず、眼が白くなりかかっていることから判断して、さほど新鮮ではなかった上に、「臭い」と評判(?)の夏のニザダイ、、、と悪条件が重なっていたことから「何事も勉強」という気持ちだけで購入したもの。アイゴ類を下ろす時と同じように、頭の後の背側半分と脊椎を断ち、内臓を傷つけないように腹腔周りにぐるりと包丁を入れて、頭ごと下側に折るようにして内臓を除去。この時は予想通り強烈な臭いがしたものの、残った胴体部分を水洗いしてからはほとんど臭みを感じなくなった。背鰭/腹鰭の付け根に包丁で切れ目を入れ3枚に下ろしたところ、出てきたのは白色でなかなか良さそうな身質。ということで、柵の端を数枚切り刺身にて試食。恐れていた臭いはほとんどなく、身質も悪くはない。また脂はたっぷり乗っている。ただし、口の中で感じるのは、ねっちゃりしたその脂の味だけで、何故か旨味が全くない。醤油をつけてみても、醤油と脂の味しかしない。鮮度が落ちると途端に旨味がなくなってしまうのだろうか?仕方がないので、ハーブ塩を振って、オリーブオイルでソテー&ワイン蒸しに。こちらも身質は悪くないのだが、やはり魚の身に全く旨味が感じられない(小学生の息子ですら「全然味のない魚だねぇ」)。しかも熱を通したからか、咀嚼していると、不快感の残る後味が口の中に少しずつ蓄積してくる始末。食べている内に段々辛くなり、結局残りは処分してしまった。2つ前に紹介したイラと同じく、自分の中の「美味く食べられない魚ニザダイ」というレッテルを剥がすことはできなかったが、今回はあまりにも条件が悪すぎたのもまた事実。比較的臭いが強くないという冬場に「活けもの」が出ていたら、もう一度だけチャレンジしてみようと思っている(家族には反対されそうだが)。


【注】写真下は2010年夏前に食べた「三の字の開き干し」(グリルに入れる直前に撮影。ちなみにこの時は既にヘッドレスになっていた)。この時は旨味も感じ、焼きたての時はそこそこ美味しく食べられたものの、皿の上で冷え始めたらもう終わり。前面に出てきた独特の臭みが時間が経つ毎にどんどん強くなってしまい、それ以上は食べられなかった。ということで、個人的には現在「対ニザダイ2連敗中」。