新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

300: オオカミウオ

スズキ目ゲンゲ亜目オオカミウオオオカミウオ
学名:Anarhichas orientalis Pallas
英名:Bering wolffish [原]

産地不明(北海道産の可能性が高い?)の全長67cmの個体から摘出した左右の標本。エタノール固定前。「狼魚のオオカミウオ」の形は、これまでに摘出/紹介してきた他のゲンゲ亜目の「魚のサカナ」とあまり似ていない独特なもの。特に肩甲骨と烏口骨が大きく離れている「魚のサカナ」はゲンゲ亜目のものとしては初登場。全体的に軟骨質に富むために半透明で、蒲鉾型の巨大な射出骨の間隙には比較的大きめの孔が開いている。

写真上の右側の標本を反対側から観察したもの。同一の標本のエタノール固定前(写真左)と固定後(写真右)。エタノールの脱水作用により軟骨質部分が多少収縮し、また白くなっているために、右側の写真では石灰化(骨化)している部分が分かりやすい。

エタノール固定後の烏口骨の『背鰭』部分の拡大図。軟骨質以外の場所でも石灰化の程度は大きくなく、スカスカの網目状になっていることが見て取れる。また『背鰭』部分自体が烏口骨本体から少し立ち上がっている。



日本近海に生息するオオカミウオ科の魚は、オオカミウオ1種類のみなので同定は比較的容易。念のため「日本産魚類検索」に記載されている、1)両顎の前方の4〜6本の歯が犬歯(写真中段右の赤四角)、2)鋤骨歯、下顎の後方歯は臼歯(写真中段右の緑矢印/これでエサの甲殻類を噛み砕くとのこと)、3)腹鰭はない、更には「新訂原色魚類大圖鑑」に記載されている、4)頭部背縁は眼の後方でわずかに盛り上がる(写真中段左の赤矢印)、5)吻端は鈍い(写真中段左)、6)口は大きく、上顎骨後端は眼の後縁下をはるかに越える(写真中段左のそれぞれ緑線と赤線)、7)背鰭は棘条のみからなり、前鰓蓋骨後縁上からはじまる、8)体色は褐色などの形質も確認した。写真下段は、大きな胸鰭(左/ちなみに21軟条)と、水族館ではあまり見られないと思われる比較的小さな尾鰭(右)の様子。改めて横側から体全体を見てみると、確かにギンポやゲンゲの仲間(ゲンゲ亜目)であることを理解できる。

正面から見ると、水族館にいるオオカミウオのイメージに近くなる。

八王子総合卸売センター内、高野水産で見つけて即購入(当日はキロ900円/2.3kg)。これまでオオカミウオは水族館でしか見たことがなく、口にするのは勿論今回が初めて。ぼうずコンニャク氏のサイトをはじめとしたネット上の情報を見る限り、オオカミウオは大きくなり過ぎたり鮮度が悪くなると皮目や脂に臭みが出てくるとのこと。ただ今回の個体のサイズはほどほどで、また鰓を見る限りなかなか鮮度も良さそうなもの。実際に魚体に鼻を近づけても臭みを全く感じなかった。そこでまず一部を刺身にして試食。身質はしっとりとしたもので、溢れるほどではないが旨味も少なくない。なかなかの美味。次に3枚に下ろした片身を切り身にして、キムチ鍋に。口の中でホロホロと崩れるタラ類のような食感で、やはり期待以上の旨味を感じる。率直に言ってかなり美味い(個人的には関東近辺で手に入る鮮度のマダラより美味いかも?と思った次第)。トロリとした皮目も結構な味。残りの身は皮を引いてムニエルに。身は柔らかめだが、旨味もより立って非常に美味い。もちろん臭みは全く感じない。身の一部と頭部以外の「あら」は職場の関係者にお裾分けしたが、味噌汁にしてもかなりの美味で、特に鰭の周りのトロンとした皮目が気に入ったとのこと。上記した通り、味/臭みが魚体のサイズや鮮度などに大きく左右されるようなので難しいところだが、今回の個体に限れば「オオカミウオは確かに美味い」と言える。


ということで、本稿でとうとう300エントリー達成となりました。次の目標である400エントリーの達成は何時になるか分かりませんが、今後ものんびりとお付き合い下さい。