新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

381: シマセトダイ

スズキ目スズキ亜目イサキ科ヒゲダイ属
学名:Hapalogenys kishinouyei Smith and Pope
英名:Fourstripe grunt [原], Lined javelinfish, Striped velvetchin

愛知県西尾市にある一色漁港産の全長約25cmの個体から摘出した左右の「魚のサカナ」。写真右は、写真左の左側の標本を反対側から観察したもの。「縞瀬戸鯛のシマセトダイ」の形状は、これまでに紹介したイサキ科の「魚のサカナ」の中では、セトダイのものに最も似ていると思われるが、肩甲骨前縁の形状、肩甲骨孔の形状、烏口骨の上方突起(『背鰭』)部の形状と立ち上がりの角度、烏口骨下側の湾入部の形状などに違いが見出せる。

ネット上の色々な情報を見る限り、シマセトダイは比較的珍しい部類の魚であるよう(例:鳥羽水族館NEWS ”珍しいシマセトダイを標本保存”)で、筆者自身が確認した範囲(頻繁に訪問できる訳ではないので、、、)では「三河一色さかな村」でも頻度良く見かけるような魚ではないと思われるが、2012年の年末だけは何故かあちこちの店で売られていたような印象がある。



写真撮影時には『日本産魚類検索 第2版』のイサキ科の検索キーを辿り、1)臀鰭軟条数は9(写真下段左)、2)下顎腹面に痕跡的な髭がある(写真上段右)、3)背鰭起部に1前向棘がある(写真中段左の赤四角)、4)背鰭・臀鰭の軟条部と尾鰭の後縁は黒くない(写真中段右および下段左右/今回の個体の尾鰭後縁は多少黒いが、セトダイほど明瞭な黒色ではない)、5)体側に顕著な横帯がない(写真下右)、6)体側に数本の暗色縦帯がある(写真下右)などの形質からシマセトダイであると判断した。ちなみに同書『第3版』では、上記の第1検索が削除されたが、それ以外の検索キーは『第2版』と同一である。

また『新訂原色魚類大圖鑑』に記載されている、7)体は卵円形で側扁する、8)体高は高い、9)鼻孔が大きく、吻端より眼の前縁近くに開く(写真上段左)、10)眼は大きい(写真上段左)、11)下顎下面に4対の小さな孔がある(写真下左)、12)両顎歯は絨毛状歯帯をなし、その外列歯は大きい、13)上顎前方の歯は強くて犬歯状(写真下左)、14)背鰭第4棘は第3棘より長い、15)臀鰭第2棘は強大(写真下段左)などの形質も確認した。

2012年12月に「三河一色さかな村」の深谷水産で購入したもの(同サイズのシマセトダイ2匹、全長約25cmのオオクチイシナギ2匹、全長約20cmのカゴカキダイに小魚が色々盛られて全部で1,500円)。この時のシマセトダイ2匹(およびオオクチイシナギとカゴカキダイ)は刺身にして知り合いの自宅で開かれた忘年会に持参。歯ごたえも適当で、身質もかなり良い。味の方も文句なく、脂の乗りも旨味も多い。体高の高いイサキ科の魚は基本的に美味いという認識が合ったが、期待に違わぬ大変な美味。忘年会参加者の評判もかなり良く、あっという間に皿の上からなくなってしまったと記憶している。

【注】『新訂原色魚類大圖鑑』に地方名「とももり」の記載があるが、どの地方の呼び名であるかは不明。またセトダイ/ヒゲダイ/ヒゲソリダイの項にも同じ名前が記載されていることから推察して、体高の高いイサキ科の魚が区別されずにこの名前で呼ばれている可能性が高い。