新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

370: ハガツオ

スズキ目サバ亜目サバ科サバ亜科ハガツオ族ハガツオ属
学名:Sarda orientalis (Temminck and Schlegel)
英名:Striped bonito [原], Oriental bonito, Indo-Pacific bonito

地方名きつね、きつねがつお、さばがつお、しまがつお(ただし標準和名シマガツオは別の魚)、すじがつお、すじまんだら、はあがつ、ほうせんなど。今回紹介するのは長崎県産の全長約53cmの雌個体(小さい卵巣を確認)から摘出した左右の「魚のサカナ」。射出骨付き。写真右は、写真左の左側の標本から射出骨を外して、反対側から観察したもの。「歯鰹のハガツオ」は、スズキ目サバ亜目の「魚のサカナ」としては比較的薄手であるが、肩甲骨が細長い、烏口骨上方の『背鰭』部が立派に突き出す、烏口骨本体と『嘴』部の間が深く湾入するなど、この亜目の「魚のサカナ」の特徴を共有している。これまでに紹介したものの中では、マグロの仲間(クロマグロビンナガメバチキハダ)やカツオのものと良く似た(反対にマルソウダヒラソウダのものとはかなり異なる)印象。ただし「歯鰹のハガツオ」では、肩甲骨孔がかなり小さい。また本稿の標本では、烏口骨の『嘴』部の先端が『針』のように尖っている。

ハガツオの「魚のサカナ」の烏口骨『嘴』部背側は中程で『庇』のように折れ曲がる。そのために写真上の方向から観察すると「幅広」に見える。



特徴的な面構えと体色なので、店頭で見た瞬間にハガツオであることを確信したが、念のため「日本産魚類検索 第2版」のサバ科の同定の鍵を辿り、1)体は紡錘型でやや側扁する、2)両顎歯は強い(写真下左右)、3)腹鰭の大きさは普通(写真下段右)、4)第1背鰭と第2背鰭はよく接近する、5)側線は1本(写真中段右の赤矢印)、6)体は全て小鱗に被われる(写真下段左)、7)体側上半部に縞模様がある(写真中段右)、8)鋤骨に歯がないなどの形質を確認してカツオであると判断。

2012年12月に博多を訪問した際に、柳橋連合市場内の竹森鮮魚店で購入(当日はキロ1,800円/1.7kg)。ネット上の情報でも「鮮度が重要」と良く書かれているが、今回の個体は色つやも良く、鰓は粘りも全くない鮮紅色という明らかに新鮮な個体。それでも身は柔らかめで、身割れしやすいので下ろす時には注意が必要。カツオなどとは全く異なるピンク掛かった白っぽい色の身(写真下の断面に注目)で、血合いはあまり大きくない。まずは刺身に。さっぱりした酸味の中に確かな旨味が感じられる。皮目には脂ものっているが、軽い風味なのでいくらでも食べられてしまう。無理矢理に例えるならば、脂の乗りがほどほどのビンナガ、もしくは逆に脂の良く乗った「黄メジ」(小型のキハダ)といった感じか。文句なしの美味。一部は「なまり節」に。身はやはり柔らかめだが、旨味甘みを強く感じる。続いて煮付け。ホワホワした食感になるが、脂の乗りが良いのでパサ付く感じはない。旨味も多い。最後にしばらく冷凍にしておいた「サク」をブツ切りにして唐揚げに。冷凍にしたせいなのか繊維質が強くなっているような印象。ただし旨味の多さは変わらない。結論としては、どの料理にしても非常に美味い魚。

369: ミギガレイ

カレイ目カレイ亜目カレイ上科カレイ科カレイ亜科ミギガレイ
学名:Dexistes rikuzenius Jordan and Starks
英名:Rikuzen sole [原], Rikuzen flounder

地方名めだまがれい、にくもち/にくもちがれい(肉持ちガレイ・福島県)、あなねばち(丹後地方)など。いわゆる「左ヒラメに右カレイ」とは関係なく、こちらは標準和名がミギガレイである(ちなみに標準和名ヒダリヒラメは存在しない)。新潟産の全長約26.5cmの雌個体から摘出した「魚のサカナ」。上が有眼側の、下が無眼側の標本。

有眼側(左)および無眼側(右)の標本を写真上とは反対側から観察。「右鰈のミギガレイ」は、一見してカレイ目の「魚のサカナ」であることが分かるもので、これまでに紹介してきたものの中では、同じカレイ亜科のクロガレイ(特に有眼側の前半分)やアサバガレイ(有眼側の後半分と無眼側)のものに良く似た印象。特にアサバガレイのものとは、無眼側の標本の烏口骨本体後下部と『嘴』部の間に骨梁の浮き出た小さな突出部が存在するという共通点もある。ただし、肩甲骨前縁、肩甲骨孔(ミギガレイのものは細長い)、烏口骨の『背鰭』に相当する部分の高さ、そこから『嘴』部にかけての湾入部の形状と位置、『嘴』部の先端の『針』の長さなど、各パーツごとにじっくり比較するとやはり多く(些細なものも含めて)の相違点に気付かされる【注】



「日本産魚類検索 第2版」のカレイ科の同定の鍵を辿り、1)眼は体の右側にある、2)有眼側の体にイボ状突起がない(写真下段右)、3)有眼側の鰓孔上端は胸鰭上端より上(写真下段右)、4)歯は小円錐状で、有眼側での発達が悪い(写真下段左)、5)口は小さく頭長(5.0cm)は上顎長(1.3cm)の約3.8倍(3.2倍以上)、6)体は楕円形、7)背鰭は74(文献値51~81。以下同)軟条、臀鰭は60(38~65)軟条、8)体は鱗に被われ、石状骨質板はない(写真下段右)、9)眼上に鱗がある(写真中段右)、10)側線鱗数は67(57~67)、11)側線はほとんどまっすぐ(写真下段右)などの形質からミギガレイであると判断。また『新訂原色魚類大圖鑑』のミギガレイの項に記載されている、12)眼隔域は狭く、隆起する(写真中段左)、13)有眼側の上顎骨後端は下顎の前縁下に達する、14)鱗は剥がれやすく、有眼側は櫛鱗(写真下左の左側)で無眼側は円鱗(同右側)、15)背鰭と臀鰭に褐色の斑点がある(ように見える)などの形質も確認。またミギガレイの下顎の中央部には骨質の突起がある(写真下右の赤丸)。

雰囲気の良く似たヤナギムシガレイとは、背鰭と臀鰭の軟条数、側線鱗数(鱗の大きさ)、歯の形状、そして無眼側から見た時の上眼の位置などで見分けることが可能【参考】

2012年11月に角上魚類日野店で購入(当日は大小6匹計0.74kgがトレイに盛られて250円。上で紹介したのはその中で最大の個体)。店頭表示も「みぎがれい」。福島などで「肉持ちガレイ」とも呼ばれるだけあって、確かにサイズに比して肉厚。今回は3匹ずつ塩焼きとムニエルに。超新鮮な個体という訳ではなかったが、塩焼きにしても生臭みのようなものは全く感じない。少し焦げた皮目からは食欲をそそる香りが立つ。しっとりとした舌触りの身が口の中でさらりとほぐれる時には確かな旨味を感じる。ギラギラするほどの脂の乗りや、溢れるほどの旨味などとは無縁だが、全体的な味のバランスが良いので、食後には「ああ旨いカレイを食べたなぁ」という満足感が残る。美味。塩焼きにして旨い魚がムニエルにして不味いはずはない。こちらも当然美味。可食部の多さ、値段からもコストパフォーマンスは高い。またミギガレイの煮付けもなかなか美味いので、機会があったら是非お試しを。


【注】ここで問題点を1つ。実はしばらく前から「カレイ科」のエントリーの改訂作業を少しずつ進めているのだが、その過程でこの科の「魚のサカナ」の形状には、どうやら同種内でも個体や産地によって「個体差」がかなり見られる(少なくともその傾向がある)ことが段々明らかになってきた。つまり上記したような「魚のサカナ」の形状の相違点は、必ずしも「種」の違いを反映しているものではなく、もしかしたら「個体差」程度の違いを見ているだけなのかも知れない。今後は可能な限り複数の個体からの標本を見比べて行こうと思っているが、カレイ科の「魚のサカナ」の形状に関する説明文は、あくまで「参考程度」のものであるとしてご覧頂けたら幸いである。

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【参考】ミギガレイとヤナギムシガレイの見分け方

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ヤナギムシガレイムシガレイ、あるいはヤナギムシガレイとヒレグロを見分ける方法に関しては、色々な書籍やネット上でも言及されているのを良く見かける。ところが、分類されている「属」は異なるにもかかわらず、体色/体形をはじめとした全体的な印象が良く似ているために、実際にしばしば混同されてしまうのがヤナギムシガレイとミギガレイである(筆者自身も見分け方を習得するまでには少々時間を要した)。ということで、以下に両種の見分けに役立つポイントをまとめてみた。

ミギガレイ
ヤナギムシガレイ
全体像(有眼側)
全体像(無眼側)
頭部(有眼側)
頭部(無眼側)
鼻腔
側線
背鰭軟条(後部)


ミギガレイとヤナギムシガレイを並べて比較すると、ヤナギムシガレイの方が明らかに体高が低く細長い(写真1および2段目左右)。本文中にも記した通り、身はミギガレイの方が厚い。ただし、どちらかの種が単独で店頭に並んでいたら、見分けるのはなかなか難しいはず。またミギガレイの方が背鰭や腹鰭の軟条数が明らかに少ない(ミギガレイは文献値で背鰭軟条数が51~81、臀鰭軟条数が38~65。ヤナギムシガレイはそれぞれ84~102、72~81であるとされている)。「めだまかれい」という地方名の通り、ミギガレイの方が眼は大きい(写真3段目左右/ヤナギムシガレイも小さくはないが)。ちなみに両種とも眼の上に小さな鱗がある。ヤナギムシガレイでは、上眼が背縁に近いために、無眼側を上にして置かれていてもその一部が見えることが多い(写真4段目右の赤丸/ただしこの個体ではあまり見えていない)。前鰓蓋骨の後縁はミギガレイでは直線的で確認しやすいが、ヤナギムシガレイでは丸みを帯びあまり明瞭ではない。ミギガレイの鼻腔は、大きな穴のように陥没している(写真5段目左の赤丸)が、ヤナギムシガレイの鼻腔はさほど目立たない(写真5段目右)。ミギガレイの歯は小円錐状だが、ヤナギムシガレイのものは門歯状(写真6段目左右)。両種とも側線はほぼ直線状(写真7段目左右)だが、側線鱗数はミギガレイの方が57~67と少なく(ヤナギムシガレイでは85~100)、それに合わせてミギガレイの方が鱗が大きい(写真7および8段目左右)。またミギガレイの鱗の方が剥がれやすい傾向があるとのこと。ヤナギムシガレイでは、背鰭/臀鰭の後方8~9軟条の先端が分枝するが、ミギガレイではそのようなことはない(写真9段目左右)。以上ご参考までに。

368: ホウセキキントキ

スズキ目スズキ亜目キントキダイ科キントキダイ属
学名:Priacanthus hamrur (Forsskål)
英名:Duskyfin bulleye [原], Moontail bullseye, Lunar-tailed glasseye, Goggle eye, Crescent-tail bigeye, Black-spot big-eye

地方名きんとき(他のキントキダイ属魚種との混称)、かげきよ(他のキントキダイ属魚種との混称)、かねひら(高知)、うまぬすっと(福岡)、きんめだい(九州/もちろん標準和名キンメダイは別の魚)、じゅさかーひーちー(沖縄)、いちぐさらー(沖縄)など。千葉県館山産の全長約19cmの個体から摘出した左右の「魚のサカナ」。写真右は、写真左の左側の標本を反対側から観察。

「宝石金時のホウセキキントキ」は、これまでに紹介してきた2種のキントキダイ科の「魚のサカナ」の中では、チカメキントキのものにより似ている印象だが、1)肩甲骨孔が丸くて大きい、2)烏口骨『背鰭』の前縁が本体に対してより垂直に近い方向に立ち上がる、3)烏口骨本体の下部後縁が鋭角に尖る、4)烏口骨の『嘴』部がより幅広いなどの相違点を挙げることができる。



『日本産魚類検索 第2版』のキントキダイ科の『同定の鍵』を辿り、1)体長(15.8cm)は体高(5.5cm)の2倍より大、2)背鰭に欠刻がない(写真中段右)、3)側線有孔鱗数は約80、4)腹鰭は普通サイズで、その後端は臀鰭基底部にかろうじて達する程度(写真下段左の緑丸)、5)尾鰭は比較的深い湾入型(写真下段右/この個体では上下両葉端が伸びているかどうかの判断は難しいが、『海の魚大図鑑』によれば、本州沿岸に生息するものはあまり伸びない傾向があるとのこと)などの形質からホウセキキントキであると判断。また『新訂原色魚類大圖鑑』に記載されている 6)口裂は垂直に近く、下顎は上顎より長い(写真中段左)、7)両顎、口蓋骨、前鋤骨に絨毛状突起、8)後鼻孔は前鼻孔より大きい(写真下左)、9)前鰓蓋骨後縁に鋸歯(写真下右)、10)鱗は粗雑な櫛鱗で小さいなどの形質も確認した。

また今回の個体では、胸鰭が淡色(写真下右)で腹鰭の基部に1黒色斑がある(写真下左)が、これらは『魚類検索』では、ミナミキントキやアカネキントキの「検索キー」の1つとされるもの(ただしホウセキキントキが「枝分かれしてから」のキーである)。とは言うものの、臀鰭は湾入型、背鰭前方に黒点がない、有孔側線鱗数が約80と多い、鰓耙数が 5+10、更には各鰭に斑紋がなく、側線上には特徴的な模様があることなどを総合的に判断すると、やはりホウセキキントキという判断で問題ないと思われる。

前々および前エントリーのツムブリユウダチタカノハと同様に、2012年11月に八王子綜合卸売協同組合のマル幸水産が仕入れてきた千葉県館山産の「入り会い」のトロ箱の中で見つけたもの(当日はキロ600円/体重測定は失念。ちなみに当日ピックアップした魚の「魚のサカナ」の紹介は本稿にて打ち止め)。先の2種(実際はアイブリを含めた3種)同様にまずは生で試食。身質は良く、旨味甘味を強く感じる。この魚も残りは干物に。焼いた後もキメの細かいしっとりした身質で、こちらも旨味甘味を強く感じる。立ち上る風味も良い。今回食べ比べた『雑魚』4種の干物の中では文句なしに一番美味かった(個人的な評価では、美味い方からホウセキキントキ>>アイブリ>ツムブリ>>ユウダチタカノハの順)。

367: ユウダチタカノハ

スズキ目スズキ亜目タカノハダイタカノハダイ
学名:Goniistius quadricornis (Günther)
英名:Blackbarred morwong [原]

文献やネット上では、ひだりまき/てっきり/からす/きこり/たかのは/からす等の地方名が見つかるが、ほぼ全てが同じタカノハダイ属のタカノハダイやミギマキと区別されずに使われていると思われるもの。

さて今回紹介するのは、千葉県館山産の全長約19cmの個体から摘出した左右の「魚のサカナ」。大きな射出骨付き。写真右は、写真左の標本から射出骨を外し、反対側から観察したもの。「夕立鷹之羽/夕立鷹羽のユウダチタカノハ」の形状は、事前の予想を遥かに上回り、近縁のタカノハダイのものと「ほぼ同一」と言えるもの。もちろん両者を詳細に比較すれば 1)肩甲骨孔がわずかに小さく、より丸い印象、2)横から撮影した写真では、烏口骨上方の『背鰭』部が多少低く、より太く見える、3)烏口骨下部の湾入部がより緩やか、4)烏口骨の『嘴』部が多少太い印象、5)のキールの上の平たい突出部がより大きいなど、極めて些細な相違点をいくつか挙げることはできるが、実際のところ同種内の『個体差』としても十分観察できそうな程度の違いでしかない。

「夕立鷹之羽のユウダチタカノハ」の烏口骨上方の『背鰭』部は、肩甲骨と烏口骨本体部が作る平面に対して斜め上方向に立ち上がるが、これは「鷹之羽鯛のタカノハダイ」でも見られていた特徴。



日本近海に生息するタカノハダイ科の魚は、タカノハダイ/ユウダチタカノハ/ミギマキの1属3種のみなので、同定は比較的容易。尾鰭に水玉模様があればタカノハダイ、尾鰭が濃黄色と黒のツートンカラーで、体側が濃い黄色で、唇が赤く、頭部の横帯が3本ならばミギマキ、尾鰭が白から淡黄色と黒のツートンカラーで、体側が白から淡黄色、唇は赤くなく、頭部の横帯が2本ならばユウダチタカノハである。

本稿の魚はその特徴からほぼ間違いなくユウダチタカノハであったが、念のため『日本産魚類検索 第2版【注】』のタカノハダイ科のページを開き、1)尾鰭は上葉が白く、下葉が黒い(写真下右)、2)口唇部は赤くない(写真中段右)、3)眼を通る黒褐色斜帯は胸鰭基部に達しない(写真中段左)、4)背鰭は17棘28軟条(写真下段左右)などの形質からユウダチタカノハであると判断。ただし本稿の魚の臀鰭は3棘8軟条(写真下左)であり、ミギマキ/タカノハダイのそれと同じ数となっている。

更に『新訂原色魚類大圖鑑』に記載された、5)体は三角形で側扁、6)後頭部は盛り上がり、背鰭棘条部はほぼ直線状、軟条部はなだらかに傾斜する(写真中段左および写真下段左右)、7)腹縁はほぼ平坦、8)口はやや下向きで唇は厚い(写真中段左右)、9)両顎歯は小さくて先端は尖り、やや幅広い歯帯をなす(写真中段右)、10)外列歯は大きい(写真中段右)、11)背鰭の棘条部と軟条部の基底長はほぼ等しい(写真下段左右)、12)胸鰭の下部軟条は肥厚し長く伸びる、13)背鰭と臀鰭の基底に鱗鞘(りんしょう)がある(写真下段左右および写真下左/写真下左が分かりやすいが、鰭の根本に鱗でできた『鞘(さや)』があることに注目)、14)体色は淡灰褐色をなし、幅広い黒褐色斜帯が走るなどの形質も確認した。

2012年11月に八王子綜合卸売協同組合のマル幸水産で購入(当日はキロ600円/約0.1kg)。前エントリーのツムブリと同様、この魚も千葉県館山産の「入り会い」からピックアップしたもの。尾ひれ下葉の一部が欠損している。下ろしている時には腸からの悪名高き「におい」を感じたが、これを取り除いた身の方は臭いに関しては全く問題なし。まずは一部を生で試食。身質は悪くないが、如何せん旨味をほとんど感じない。残りは立て塩に30分ほど浸して干物に。これを炙ったものの身質もやはり悪くない(連れ合いは「キスに近い?」)が、やはり旨味がほとんど感じられない。季節/サイズ/鮮度など色々な要因はあるとは思うが、今回の個体に関しては「以前食べたタカノハダイの方が明らかに美味い」というのが我が家の結論。


【注】2013年2月26日に遂に出版された『日本産魚類検索 全種の同定 第3版』(『第2版』から約350種増の4213種類を掲載だそうです)は、筆者も東海大学出版会のサイトで注文済みだが、どうやら注文多数で(そりゃそうだ)手元に届くまでにかなり時間が掛かりそうな情勢、、、ということで、少なくとも現時点で既にストックされている(つまり『第2版』の検索キーで同定済みの)エントリー#400近くまでは『第2版』を元に記事を執筆する予定。またこれまでの記事の内容も『第3版』に合わせておいおい改訂しようと思ってはいるが、本「図鑑」もエントリー数がそれなりに多くなっているので実際どこまでやれるやら、、、

366: ツムブリ

スズキ目スズキ亜目アジ科ブリモドキ亜科ツムブリ属
学名:Elagatis bipinnulata (Quoy and Gaimard)
英名:Rainbow runner [原], Rainbow yellowtail, Hawaiian salmon

地方名は多く、ネット検索で簡単に見つかるもので、つんぶり(千葉)、つんぶい(伊東)、すぎ(伊豆諸島/ただし標準和名スギとは別の魚)、おきぶり(三重/和歌山)、まるばまち(和歌山)、きつね(高知/ただし「きつね」とも呼ばれるハガツオとは別の魚)、いだ(愛媛)、うめきち(鹿児島)、ちょかきん(鹿児島)、とりかじまわし(鹿児島)、やまとながいゆ(沖縄)など。千葉県館山産の全長約30cmの小型個体から摘出した左右の標本。写真右は、写真左の左側の標本を反対側から観察。エタノール固定中に少々黄変してしまった。

「錘鰤/紡錘鰤/頭鰤のツムブリ」は、これまでに紹介したアジ科の「魚のサカナ」の中でも、やはり同じような紡錘型の体を持つアジ科ブリモドキ亜科、特にブリ属のヒラマサカンパチブリのものに良く似ている。肩甲骨孔は大きく、肩甲骨の形状自体もほとんど変わらない。ただしツムブリのものでは、1)烏口骨の左右の幅が短いために寸詰まりな印象を与える、2)烏口骨本体の後下部が鋭角的に、比較的深く湾入する、3)烏口骨上方の『背鰭』部先端は丸みを帯び、そこから『嘴』部に向かう上縁のラインが曲線的(これらの点ではブリのものに似る)など、ブリ属の「魚のサカナ」との間にはいくつかの相違点が認められる。



特徴的な体色と体形から一見してツムブリであることが確実な個体であったが、念のため『日本産魚類検索 第2版』のアジ科の検索キーを辿り、1)腹鰭がある、2)背鰭棘部は皮下に埋没しない(写真中段右)、3)側線に稜鱗がない、4)背鰭軟条部(写真下段左の赤線)は臀鰭軟条部始部(同緑線)よりもはるかに前にある、5)背鰭棘間は鰭膜で連続する(写真中段右)、6)尾柄部に小離鰭(各2軟条)がある(写真下段右の紫四角)などの形質からツムブリであると判断。また『新訂原色魚類大圖鑑』に記載された、7)臀鰭前方に1本の遊離棘条がある(写真下左の青丸)、8)尾鰭は深く2叉する(写真下右)、9)尾柄部上下に各1欠刻がある(写真下段右および写真下右)などの形質も確認した。

2012年11月に八王子綜合卸売協同組合のマル幸水産で購入(当日はキロ600円/約0.2kg)。店頭に置いてあった千葉県館山産の「入り会い」からピックアップした数種類の魚の内の1匹。2011年5月に沖縄県那覇市にある「泊いゆまち」を訪れた時に全長100cm前後の大型ツムブリを見かけたが、出張中にそのサイズの魚を入手する/食べ切るのはさすがに無理ということで泣く泣く諦めて以来の出会いで、思わず「おぉっ」と声を上げてしまった(お恥ずかしい限りです)。さて今回の魚は、まず一部を生で試食。旨味は少なくなく食感も良い。少々味が薄めのヒラマサ系の刺身と言ったところか。なかなか美味い。残りは開いて干物に。焼いた身の見た目、食感ともマアジの干物に似た印象だが、脂の乗りがさほどでないためか、実際に口にすると少々パサつくように感じる。旨味もそれなりにあるが、どちらかと言うとあっさりとした味わい(同じ日に同じトロ箱からピックアップし、同じように干物にして食べ比べたアイブリの方が旨味は明らかに多い)。実際ネット上では「ツムブリの大型個体は美味いが小型のものは美味くない」との記述が散見されるが、個人的には今回の小型個体でも「普通に美味しく食べられる魚」であったし、大型個体の方がより美味いのであれば是非いつか食べてみたいと思う。


【参考】Wikipediaツムブリ」を含め、ネット上では「ツムブリの大型個体ではシガテラ中毒の報告もある」という記述が散見されるが、筆者自身がネット検索したところでは、残念ながらその『報告』(元資料)は見つけられなかった。wikipedia「ツムブリ」にもリンクが貼られているFishBaseの"Elagatis bipinnulata, Rainbow runner"のエントリー内の"More Information">"Ciguatera"を見ると、カリブ海にあるイギリス領ヴァージン諸島の漁業の潜在能力に関する1969年出版の古い文献(Dammann, A.E., Study of the fisheries potential of the Virgin Islands. Special Report. Contribution No. 1. Virgin Islands Ecological Research Station (1969).)が唯一挙げられているが、残念ながらネット上で本資料のPDFなどを見つけることはできなかったので実際の内容は不明である。また厚生労働省の『自然毒のリスクプロファイル:魚類:シガテラ毒』にツムブリの名前は掲載されていない。更に2010年出版の文献(大城直雅: 魚類の毒 (4): シガテラ毒. 食品衛生研究, 60 (1), 37-45 (2010).)によると、1997~2006年に沖縄県で発生した合計33件(ただし関係部署が把握しているものだけ)のシガテラ食中毒の原因魚種リストの中にもツムブリの名前はない。もし「ツムブリのシガテラ食中毒」に関する『報告』をご存知の方がいらっしゃったら、ご教授頂けると有り難いです。

とは言うものの、「資料が見つけられない/危険魚リストの中に名前がない」即ち「100%安全」という訳でも決してないので念のため。上述した2010年の文献(と「自然毒のリスクプロファイル」)には、1)シガテラの原因となりうる魚は400種以上にのぼるとされている(ただし頻繁に食中毒をもたらすのは、バラハタ/バラフエダイ/イッテンフエダイなど、その一部である)こと、2)主要な原因魚としては、カマスカマス属、ブダイ科アオブダイ属、ハタ科マハタ属、バラハタ属、スジアラ属、フエダイフエダイ属、アジ科ブリ属、サバ科サバ属など主にサンゴ礁周辺に生息する種が挙げられること、3)ただし原因魚に関して地域差や個体差が極めて著しいこと(例えば小さな島のある海域では食用とされる魚種が、同じ島の別の沿岸では高率に毒を有することもあるのだとか)、4)中毒を起こした魚の外見や味に異常は認められず、摂食前に毒性を判断するのは困難であること、などが記されている。また実際ツムブリの刺身を食べて「当たった」ことを記しているブログも見つけている。十分ご注意頂きたい(といっても、外見から中毒原因魚を判断できないのならばどうすれば良いのやら、ですね)。

365: オヒョウ

カレイ目カレイ亜目カレイ上科カレイ科オヒョウ亜科オヒョウ属
学名:Hippoglossus stenolepis Schmidt
英名:Pacific halibut [原], Alaska halibut

地方名として、おがれい、ささがれい(ただし「ささがれい」とも呼ばれるヤナギムシガレイは別の魚)などがあるとのこと。また小型サイズの個体は「こひょう/小鮃/小兵」などと揶揄的に呼ばれる場合もあるとか。北海道襟裳産(出荷はJFえりも)の全長約44cmの雄個体(小さいながら精巣を確認)から摘出した「魚のサカナ」。上が有眼側の、下が無眼側の標本。

有眼側(左)および無眼側(右)の標本を上の写真とは反対側から観察。「大鮃/大兵のオヒョウ」を見て最初に眼につくのは、針状に非常に長い烏口骨の『嘴』部。この特徴はこれまでに紹介してきたカレイ科オヒョウ亜科に属する種(マツカワアブラガレイサメガレイホシガレイ)の「魚のサカナ」でも見られていたものだが、本稿のオヒョウのものが「最長記録」である。また、これまで紹介してきたカレイ目の「魚のサカナ」は、近縁種間でも形状に明らかな差異が観察されることが多かったが、「大鮃/大兵のオヒョウ」も他の種のものと比較するとやはり「独特」と言える形状。肩甲骨の先端は太く角張り、烏口骨本体下部は『カーテン』状に薄く波打つ。肩甲骨孔は丸い。

(写真左)有眼側の標本の烏口骨本体と『嘴』部を拡大して観察。烏口骨下部の『カーテン』状の部分がそのまま『嘴』部の上縁に繋がっている。また横から見ると針状に見える『嘴』部分だが、実際は少し幅広である。(写真右)無眼側の標本を「魚のサカナ」の『背側』から観察。『背鰭』部の張り出しに注目。また肩甲骨と烏口骨は少々角度をもって結合している(=平面状に並んでいる訳ではない)こともお分かり頂けるはず。



オヒョウを漢字で書くと「大鮃」、即ち「大きなヒラメ」を意味する訳だが、実際は眼が右にあるカレイの仲間。『日本産魚類検索 第2版』のカレイ科の検索キーを辿り、1)眼は体の右側にある(写真中段左)、2)有眼側の体にイボ状突起がない(写真下段左および写真下右)、3)有眼側の鰓孔上端は胸鰭上端より上(写真下段左)、4)顎歯は犬歯状(写真中段右)、5)口は大きく頭長(9.9cm)は上顎長(3.6cm)の2.75倍(3.2倍以下)、6)両顎歯は有眼側・無眼側とも良く発達する写真中段右)、7)尾鰭後縁は湾入する(写真下段右)、8)側線は胸鰭上方で湾曲する(写真下段左の紫四角)などの形質からオヒョウであると判断。また『新訂原色魚類大圖鑑』に記載されている、9)体は長楕円形、10)尾柄部は細長い(写真下段右)、11)上顎後端は下目の中央下に達する(写真中段左)、12)鰓耙は強く短い、13)鱗は細かく、両体側とも円鱗、14)体色は有眼側が淡褐色で乳白色および黒色斑が散在(写真下段左および写真下右)などの形質も確認した。

オヒョウ属の魚は、北太平洋に生息する本稿の Hippoglossus stenolepis Schmidt(Pacific halibut; Wikipediaなどではこれを訳した「タイヘイヨウオヒョウ」なる名前が挙げられているが、標準和名はあくまでオヒョウである)、および北大西洋に生息する Hippoglossus hippoglossus (Linnaeus) (Atlantic halibut; 『新訂原色魚類大圖鑑』では学名をそのままカタカナに直し「ヒポグロッスス・ヒポグロッスス」として掲載。また流通名を訳した「タイセイヨウオヒョウ」もネット上では散見される)という世界でも2種類のみ。オヒョウ属の魚が世界最大のカレイの仲間であることは有名だが、FishBaseによれば、これまでの記録はオヒョウで全長267cm(ただし日本近海では、大きくなっても100cm程度とのこと)、特に大きくなる大西洋産ヒポグロッスス・ヒポグロッススに関しては何と470cmなのだとか。また属名の Hippoglossus は、ギリシャ語で「馬」を意味する"hippos"(FishBaseでは"ippos"になっているが恐らくタイプミス)と「舌」を意味する"glossus"が結ばれたものとのこと。直訳すれば「ウマノシタ(!)」である。

2012年11月に八王子総合卸売センター内、高野水産で購入(当日はキロ500円/約0.8kg)。箱書きは「大鮃」で、お店の方も「長年やっているけど、頭付きのオヒョウは初めてかも」とのこと。体表は粘液でベタベタしており、独特の香りもある(カジカで感じるようなもの。ただし香り自体は異なる)。オヒョウの場合はシュードテラノーバ寄生の恐れがあり、また鮮度的なこともあったので、ほんの一部のみを生食。身質は悪くないが、旨味はあまり感じられない。残りは切り身にしてまずは半分をムニエルに。身が厚いので火は通りにくいが、その分「食べで」はある。筋肉質の身は火が通った後はぶりぶりした食感になるが、身離れは悪くない。残りの切り身は煮付けに。こちらの方が身は多少柔らかい。含まれる旨味は「ほどほど」程度だが「定食屋さんのカレイの煮付け」を思わせる普通に美味いもの。ただ総合的に見ると、オヒョウは決して不味くはないが、それほど大騒ぎするほどの味でもないかな、、、というのが個人的な感想。

364: イスズミ

スズキ目スズキ亜目イスズミ科イスズミ属
学名:Kyphosus vaigiensis (Quoy and Gaimard)
英名:Large-tailed drummer [原], Brassy chub, Blue sea chub, Brassy drummer, Brassy rudderfish, Long-finned drummer, Lowfin rudderfish

地方名ひちくろ(五島)、いずすみ(全国)、ごくらくめじな(和名として使われたこともあるとか)、きんしち(金七/伊豆大島)、くろばんちょ(能登/イスズミ属の総称)、きつうお(高知)、しちゅー(沖縄:メジナとの混称)、うんこたれ/ばばたれ(近畿地方)など。

今回紹介するのは、神奈川県小田原産の全長約21cmの個体から摘出した左右の「魚のサカナ」。写真右は、写真左の左側の標本を反対側から拡大して観察したもの。本『図鑑』にイスズミ科の魚が登場するのは初となるが、「伊寿墨/伊須墨のイスズミ」は、直感的にもイスズミと近縁(慣れていない釣り人などがしばしば混同してしまうのはご承知の通り)であることが明らかなメジナ科(メジナクロメジナ)の「魚のサカナ」とやはり良く似た雰囲気を持っている。また「烏口骨本体下方後縁が突出(筆者にはイルカやサメの胸鰭のように見える)し、そこから『スカート/カーテン』様の構造が広がり、これが『嘴』部と結合した末端部には『嘴』部を縦走するキール部分の先端が突き出る」という特徴は、タカベ科(日本産はタカベ1種のみ)、カゴカキダイ科(日本産はカゴカキダイ1種のみ)、更にはイシダイ科(日本産はイシダイイシガキダイの2種のみ)の「魚のサカナ」にも共通して観察されるもの。

実際、研究の世界からは長年にわたりイスズミ/メジナ/タカベ/カゴカキダイなどの類縁関係が示唆されており、Nelsonの「Fishes of the World Fourth Edition」(2006)では、イスズミ亜科/メジナ亜科/タカベ亜科/カゴカキダイ亜科/Parascorpidinae亜科の5亜科をまとめて「イスズミ科 Family Kyphosidae」としている(ただし、この「イスズミ科」の単系統性はまだ確定していない旨も明記)。また同書にも引用されている、2002年に報告されたミトコンドリアのNADHデヒドロゲナーゼのサブユニット2のDNA配列を用いた系統解析【参考文献1】の結果では、タカベ科/イシダイ科/イスズミ科/ユゴイ科/カゴカキダイ科/イスズミ科の魚が確かに近縁であることが示されており(とはいうものの、その系統的な「らしさ」は比較的低いため、それぞれを別々の「科」として扱うのが適当であろうと結論しているが)、これらの「魚のサカナ」の形状が似ているのも「なるほど納得」といったところである。

写真上は、本『図鑑』でこれまで紹介してきた「Nelsonによる”イスズミ科”」(とシマイサキ科)に含まれる「魚のサカナ」を【参考文献1】中の系統樹(ちなみにNJおよびMLとも分岐パターンは同じ)に合わせて並べてみたもの(上の「系統樹」の枝の長さは、実際の結果を反映していないのでご注意)。これらの「魚のサカナ」(シマイサキのものを除く)の全体的な形状が良く似ていることにご注目。ここまで来ると、論文中の系統樹でイスズミ科とカゴカキダイ科の間に位置しているとされるユゴイ科の「魚のサカナ」は是非とも見てみたいところ。



イスズミ科の魚は、両顎の外側の列の歯が単尖頭であること、背鰭棘が10~11であることで、体型の良く似たメジナ科の魚(歯は三尖頭で、背鰭棘は14~15)と区別できる【追加情報】。『日本産魚類検索 第2版』のイスズミ科の検索キーを辿り、1)体は高く、尾柄は短い、2)体の側面には多くのオリーブ色の細い線がある(写真下左)、3)背鰭は11棘14軟条(写真下段左の赤点)、臀鰭は3棘13軟条(写真下段右の赤点)などの形質からイスズミであると判断。また『新訂原色魚類大圖鑑』のイスズミの項に記載されている、4)吻が短く先端は鈍い(写真中段左)、5)口は短く両顎は同長(写真中段左)、6)全鋤骨に歯、前鰓蓋骨縁は細かい鋸歯状、7)尾鰭後縁は湾入(写真下右)、8)吻以外の頭部、背鰭、臀鰭は鱗に被われる(写真中段左、写真下段左右)、9)腹鰭/背鰭/臀鰭は暗色(写真下段左右)などの形質も確認した。更にこの個体の第1鰓弓鰓耙数は 31 (9+22)で、この形質もイスズミであることと矛盾しない(ちなみにテンジクイサキでは26~31、ノトイスズミでは21~24、ミナミイスズミでは26~29である【参考文献2】)。

2012年11月に八王子総合卸売センター内、高野水産で購入(当日はキロ500円/0.14kg)。見るからに新鮮な個体であったが、価格からすればやはり『雑魚』扱い。魚体の処理をしている時には腑から悪名高き『磯臭さ』が漂ってきたが、この部分を取り除いてしまった後は臭みは全く感じなかった。鱗は結構飛び散る。身の色は多少黒っぽく、メジナ類のものに良く似た印象。腹膜は真っ黒。まずは一部を生で試食。身質は期待以上に良く、旨味甘味もしっかり感じる。なかなかの美味。残りは開いて干物に。しっかりした身で、旨味が何故か「まずまず」くらいに落ちてしまったが、少なくともほとんど臭みはない(ニザダイの開きで苦労したのとは大違い)。磯釣り師には大変嫌われている魚ではあるが、今回の個体に限って話をすれば、普通に美味しく食べられた。


【追加情報】イスズミ科のイスズミでは、両顎の外側の列の歯が単尖頭(歯先の山は一つ)であるのに対して、メジナ科のメジナ/クロメジナでは、歯は三尖頭(歯先が三つ又になっている)。またメジナの顎には歯が2~3列並ぶが、クロメジナではほぼ1列のみ。また今回のイスズミの背鰭棘は11(10~11)であったが、体型の良く似たメジナ科の2種では14~15であることにより区別可能。

イスズミ
メジナ
クロメジナ
全体像
背鰭棘


【参考文献】
1. Yagishita, N., Kobayashi, T., and Nakabo, T.. Review of monophyly of the Kyphosidae (sensu Nelson, 1994), inferred from the mitochondrial ND2 gene. Ichthyol. Res. 49: 103–108 (2002). PDF

2. 坂井 恵一、「日本のイスズミ属魚類」、「能登の海中林(のと海洋ふれあいセンターだより)」 2004年3月 第20号 PDF