新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

368: ホウセキキントキ

スズキ目スズキ亜目キントキダイ科キントキダイ属
学名:Priacanthus hamrur (Forsskål)
英名:Duskyfin bulleye [原], Moontail bullseye, Lunar-tailed glasseye, Goggle eye, Crescent-tail bigeye, Black-spot big-eye

地方名きんとき(他のキントキダイ属魚種との混称)、かげきよ(他のキントキダイ属魚種との混称)、かねひら(高知)、うまぬすっと(福岡)、きんめだい(九州/もちろん標準和名キンメダイは別の魚)、じゅさかーひーちー(沖縄)、いちぐさらー(沖縄)など。千葉県館山産の全長約19cmの個体から摘出した左右の「魚のサカナ」。写真右は、写真左の左側の標本を反対側から観察。

「宝石金時のホウセキキントキ」は、これまでに紹介してきた2種のキントキダイ科の「魚のサカナ」の中では、チカメキントキのものにより似ている印象だが、1)肩甲骨孔が丸くて大きい、2)烏口骨『背鰭』の前縁が本体に対してより垂直に近い方向に立ち上がる、3)烏口骨本体の下部後縁が鋭角に尖る、4)烏口骨の『嘴』部がより幅広いなどの相違点を挙げることができる。



『日本産魚類検索 第2版』のキントキダイ科の『同定の鍵』を辿り、1)体長(15.8cm)は体高(5.5cm)の2倍より大、2)背鰭に欠刻がない(写真中段右)、3)側線有孔鱗数は約80、4)腹鰭は普通サイズで、その後端は臀鰭基底部にかろうじて達する程度(写真下段左の緑丸)、5)尾鰭は比較的深い湾入型(写真下段右/この個体では上下両葉端が伸びているかどうかの判断は難しいが、『海の魚大図鑑』によれば、本州沿岸に生息するものはあまり伸びない傾向があるとのこと)などの形質からホウセキキントキであると判断。また『新訂原色魚類大圖鑑』に記載されている 6)口裂は垂直に近く、下顎は上顎より長い(写真中段左)、7)両顎、口蓋骨、前鋤骨に絨毛状突起、8)後鼻孔は前鼻孔より大きい(写真下左)、9)前鰓蓋骨後縁に鋸歯(写真下右)、10)鱗は粗雑な櫛鱗で小さいなどの形質も確認した。

また今回の個体では、胸鰭が淡色(写真下右)で腹鰭の基部に1黒色斑がある(写真下左)が、これらは『魚類検索』では、ミナミキントキやアカネキントキの「検索キー」の1つとされるもの(ただしホウセキキントキが「枝分かれしてから」のキーである)。とは言うものの、臀鰭は湾入型、背鰭前方に黒点がない、有孔側線鱗数が約80と多い、鰓耙数が 5+10、更には各鰭に斑紋がなく、側線上には特徴的な模様があることなどを総合的に判断すると、やはりホウセキキントキという判断で問題ないと思われる。

前々および前エントリーのツムブリユウダチタカノハと同様に、2012年11月に八王子綜合卸売協同組合のマル幸水産が仕入れてきた千葉県館山産の「入り会い」のトロ箱の中で見つけたもの(当日はキロ600円/体重測定は失念。ちなみに当日ピックアップした魚の「魚のサカナ」の紹介は本稿にて打ち止め)。先の2種(実際はアイブリを含めた3種)同様にまずは生で試食。身質は良く、旨味甘味を強く感じる。この魚も残りは干物に。焼いた後もキメの細かいしっとりした身質で、こちらも旨味甘味を強く感じる。立ち上る風味も良い。今回食べ比べた『雑魚』4種の干物の中では文句なしに一番美味かった(個人的な評価では、美味い方からホウセキキントキ>>アイブリ>ツムブリ>>ユウダチタカノハの順)。