新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

140: ネズミゴチ

スズキ目ネズッポ亜目ネズッポ科ネズッポ属
学名:Repomucenus curvicornis (Valenciennes)
英名:Richardson dragonets, Richardson's dragonet, Richard's dragonet

同一個体(雌)から摘出した左右の標本。天ぷら種になる所謂「めごち」の仲間だが、他のネズッポ科の「魚のサカナ」同様、肩甲骨/烏口骨との境目の判別は非常に困難。以前摘出したセトヌメリのものと比較すると、1)烏口骨の上部突起(『背鰭』)の根元に「小孔」が存在する、2)烏口骨の上部突起と射出骨後端部がつくる『湾』のような部分の「切れ込み」の程度が異なる、3)肩甲骨孔がより丸っぽい(特に写真左の右側の標本)、4)烏口骨の先端が広がらない、5)『前頭部』方向に骨がより大きく広がっている、、、などの細かい相違点が観察されるが、基本的には他のネズッポ科の「魚のサカナ」とほぼ同じ形である。

ネズッポ科の魚の同定は、素人にはなかなか難しい。この雌個体は、ネズッポ科の魚の同定に大切な第1背鰭の薄膜が破れ、完全に失ってしまっていたが、1)尾柄部根元背側に左右の側線を結ぶ連結枝が存在する、2)後頭部に骨状突起がない、3)前鰓蓋骨棘は余り長くなく、内側の突起は2本(写真左/一部折れている可能性もあるが)、4)尾鰭上部には暗色小斑点があり、下部には太い濃暗色帯がある、5)第1背鰭のどの棘も糸状に伸びない、6)臀鰭に黄色斑点が散在している(写真右/ただしこの形質は「日本産魚類検索 第2版」では、分類の鍵には挙げられてはいない)ことなどから、「ネズミゴチ」であると判断した。間違っている場合は是非ご教授下さい。

愛知県一色漁港にある「三河一色さかな村」で、他の魚と一緒に「トレイ一盛り数百円」で購入したもの。連れ合いの実家で「めごち」の定番料理である天ぷらにしてみたが、「これは美味い」と大評判で、あっという間に皿から消えてしまった。身質/旨味ともに優れ、非常に美味。標準和名に「ゴチ」と付くが、この直前のエントリーであるイネゴチ(#139)やマゴチなど「コチ科」の魚とはかなり遠縁なのでご注意を。

注:「日本産魚類検索 全種の同定 第2版」や「新訂原色魚類大圖鑑」では、ネズミゴチの学名を Repomucenus curvicornis (Valenciennes)と掲載しているが、FishBase によると、この Repomucenus curvicornis と、Common name "nezumi-gochi" でヒットする Repomucenus richardsonii (Bleeker)は、現在では Callionymus curvicornis Richardson のシノニムとなっている(ただし「Common name」欄に "nezumi-gochi" はリストアップされていない)。本稿では「日本産魚類検索」などの記載に則り、ネズミゴチの学名として Repomucenus curvicornis (Valenciennes)を採用したが、そのために英名の"Richardson"などとの整合性が取れなくなっているので念のため。