新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

155: ネンブツダイ

スズキ目スズキ亜目テンジクダイ科テンジクダイ属
学名:Apogon semilineatus Temminck and Schlegel
英名:Barface cardinalfish, Half-lined cardinal, Half-lined cardinal, Half-striped cardinalfish

相模湾産の丸干し(抱卵したメス個体)から摘出。ナイフのような形に広がった烏口骨上部も含め、「魚のサカナ」の全体的な特徴がホタルジャコ科のホタルジャコアカムツのものに良く似た印象。ただし、1)肩甲骨孔が細長い楕円形で、そのすぐ上にもう一つ小孔があること、2)全体に多少横長なこと、3)『顔』の前縁が直線でなく曲線的なこと、などの点が異なる。

テンジクダイ科の魚は耳石のサイズが魚長に比してかなり大きく、「○○イシモチ」という名前のつく魚が多い。そこから類推できる通り、ネンブツダイの耳石もかなり大きめ。


 

吻部から伸びて鰓蓋後縁で途切れる黒色帯(最初に挙げた英名の内、後ろ3つはこの形質に由来)と、口先から眼の上縁を経て背部に沿って伸びる縦帯(後者は上の写真では判別しにくいが)がネンブツダイの大きな特徴。また尾柄上の黒色円斑は瞳よりも小さい。写真上の個体は腹部が少々裂けており、そこからオレンジ色の卵が見えているのでメスであることが分かる。ちなみにテンジクダイ科の多くの種では、オスが卵を口内保育することが知られている。

これも御徒町「吉池」で購入した小田原の山市湯川商店加工のもの。同時購入したオキヒイラギの丸干しと同様にフライパンの上で焼いてみたが、ネンブツダイに関しては巨大な耳石のある頭からの丸かじりはさすがに自重した。テンジクダイ科の魚は釣り場では「外道中の外道」(狙った獲物でないという意)ということで、実はこれまで口にしたことがなかったのだが、予想外の美味さで本当にびっくり。嫌な味は全く感じず(もちろん干物特有のひねた風味はあるが)、旨味もなかなか多い。何事もイメージで判断してはいけないな、、、と猛省した次第。

【参考】下は神奈川県三浦半島城ヶ島で釣られたネンブツダイの鮮魚。上述した2本の縦帯が明瞭に見える。

(10/5/10 写真追加)