新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

195: ヒイラギ

スズキ目スズキ亜目ヒイラギ科ヒイラギ属
学名:Nuchequula nuchalis (Temminck and Schlegel)
英名:Spotnape ponyfish [原], Silver ponyfish

地方名ぜんめ(三河地方)など。千葉産の体長約13cmの個体から摘出した左右の標本。「柊魚(鮗、柊、疼木とも。ただし「魚へんに冬」は本来はコノシロを表す)のヒイラギ」の上半分に関しては、肩甲骨から烏口骨の『背鰭』、更には『嘴』部先端まで、以前紹介した同じヒイラギ科のオキヒイラギのものと良く似ている。肩甲骨孔が大きいのも共通。しかしながら、「柊魚のヒイラギ」の下半分に関しては、烏口骨本体の後端部が大きく湾入し、『嘴』部の下側にカーテン状の構造が出来ないため、オキヒイラギのものと異なりアジ/ムロアジ類の「魚のサカナ」と似ているような印象はあまり受けない。またこの『嘴』部の先端の擬鎖骨と接するところが「足場」のように横に広がらないのも相違点の一つ。


今回の魚は、1)前歯に大きな犬歯状の歯がなく、口は前下方に伸出する(写真下段左)、2)体高は高く頬に鱗がない、3)体側前半部に鱗がなく、後頭部に暗色斑がある(写真下段右)という形質からヒイラギであると判断。

愛知県一色漁港にある「一色さかな広場・朝市広場」の『カネス』で購入。ちなみに「さかな広場」は「三河一色さかな村」から歩いてすぐの場所にもかかわらず、色々あって実は今回が初訪問。当日「さかな村」の方では全く「ゼンメ」を見かけず、また三河湾では少々季節外れのような気もしたので、産地を確認したら「千葉産」とのこと。釣れたて/獲れたてのヒイラギは大量の粘液に包まれるのだが、なるほどそう言われてみれば確かにあまりネバネバしていない、、、ということで刺身は最初から諦め、今回は煮付け、塩焼き、干物に。煮付けも美味かったが、塩焼きの方が個人的には好み。小さいのに脂も程よく乗り、旨味成分も多く非常に美味。また干物にして水分を飛ばしてやると、旨味が濃縮されてまさに絶品。各鰭の棘条が鋭いので、キッチンバサミなどで予め鰭ごと切ってしまうと料理しやすい。

筆者が子供の頃は三河湾辺りでも完全に「雑魚」扱いで、トロ箱に山盛りでも数百円だったような記憶があるが、近年テレビ番組などで紹介されることが増え、その美味さが広く知られるようになったために価格が急騰したとのこと。

注:Kimura, Motomura and Iwatsuki (2008) Ichthyol Res 55: 204-205.により、ヒイラギ科が新たに7属に再分類され、日本近海に生息するヒイラギ属はヒイラギ一種のみとなった。