新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

200: スジアラ

スズキ目スズキ亜目ハタ科ハタ亜科ハタ族スジアラ属
英名:Plectropomus leopardus (Lacepède)
英名:Leopard coraltrout [原], Leopard coralgrouper, Coral grouper, Bluedotted coraltrout, Blue-dotted coral-trout

地方名アカジンミーバイ、アカジン(沖縄)。沖縄産の体長約35cmの個体(「養殖魚」という話)から摘出した左右の「魚のサカナ」。右の標本は射出骨付き。今回の「筋魚荒(「アラ」は魚偏に荒)のスジアラ」は烏口骨後端下部の形が左右の標本で少々異なってしまっている(調製時のちょっとした問題によるもの?)が、1)肩甲骨の大きさが烏口骨に比べて小さめ、2)肩甲骨と烏口骨の作る下部のラインが後方の斜め下方向に向かう、3)烏口骨上方の『背鰭』部があまり尖らず、またこの部分がアカハタキジハタのもののように大きくカールしない、4)烏口骨の『嘴』部は線状で細長い、5)肩甲骨孔は比較的大きいなどの特徴がある。写真右は、写真左の左側の標本を反対側から観察したところ。



ハタ科の魚はそもそも種類が多く、また成長の度合いや生息場所の違い、更には個体差で体色や模様が大きく異なることも多いため、その「見分け」はしばしば困難である。よって今回の魚もその形質を「日本産魚類 全種の同定」を元に入念にチェックしたが、1)背鰭棘数が「8」、2)前鰓蓋後縁が鋸歯状(写真中段左赤矢印)で下縁に前向棘あり(同白丸)、3)腹鰭第5軟条と腹部の間に鰭膜がある(写真中段右の緑丸)、4)主上顎骨後下端が突出しない(写真下段左)、5)下および間鰓蓋骨外縁に小棘がない(写真中段左の青矢印)、6)涙骨の表面は円滑(写真下段左)、7)体に散財する青斑点は瞳孔より小さい、8)臀鰭第1棘は不顕著、9)尾鰭後縁は湾入型、10)胸鰭は淡色(少なくとも黒ではない/写真下段右)などの形質からスジアラであると判断した。ちなみにネット検索などでヒットするスジアラの写真はほとんどが赤い体色のもの。今回の魚の体色は暗褐色であるが、「新訂原色魚類大圖鑑」の記述ではスジアラの体色は「暗赤色や暗褐色など」とあり、これも矛盾しない。また「全種の同定」には『鍵』として挙げられてはいないが、体色/模様ともに良く似たコクハンアラと見分ける方法としてネット上で散見される、「スジアラにだけ見られる眼の周りのリング状の青色帯」はこの個体でも明瞭に観察できる(写真下)。

八王子総合卸売センター内、高野水産で購入。当日はキロ2000円だったが、鮮度維持のために(恐らく出荷時に)鰓と内臓がきれいに取り除かれていた。キロ辺りの可食部が多いという意味でも「割安感」あり。まずは刺身に。コリコリとした歯ごたえと、しっとりとキメの細かさを併せ持つ素晴らしい身質。脂から感じる甘みもさることながら、とにかく旨味が多く、非常に美味。下ろした魚の骨や皮などは単なる「塩ゆで」にして食してみたが、ホロホロと崩れる身には上品な旨味がたっぷりで、こちらも非常に美味。トロりとした皮も美味い。沖縄などでは超高級魚扱いという話だが、この味ならさもありなんと心から納得した次第。前述した通り今回の個体は恐らく養殖魚だが、機会があったら是非「天然もの」を堪能してみたい。