新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

286: タイセイヨウサケ

サケ目サケ科サケ亜科サルモ(タイセイヨウサケ)属
学名:Salmo salar Linnaeus
英名:Atlantic salmon [原]

通名アトランティックサーモン、サーモン。日本近海に生息するサケ/マス類は、ほとんどがサケ(タイヘイヨウサケ)属の魚であるため、大西洋沿岸に生息するサルモ(タイセイヨウサケ)属の「魚のサカナ」がどんな形をしているのか以前から興味を抱いていた。ということで、今回は市場で見つけたノルウェー産(恐らく)の全長約68cmの活け〆養殖個体から摘出した「魚のサカナ」をご紹介。「大西洋鮭のタイセイヨウサケ」は、太くて立派な中烏口骨や烏口骨の『背鰭』部が網目状になっていることなど、これまでに紹介したサケ亜科の「魚のサカナ」と「基本的な特徴」を共有していると言える。

とは言うものの、1)烏口骨の『嘴』部が非常に幅広であること(写真上左/恐らくこれが最大の特徴)、2)中烏口骨先端部と肩甲骨先端部を結ぶ細い骨が見当たらないこと(ただし今回の標本では折れてしまっただけという可能性もあり。要確認)、3)烏口骨本体の中程に比較的大きな孔が開いていること(写真上右の赤矢印/ただし、ニッコウイワナのものでも同じような比較的大きな孔が確認できる)など、幾つかの相違点を挙げることは可能である。また骨全体がスカスカな印象。



今回は輸入魚ということで何時もの「日本産魚類検索」が使えないが、FishBase の Salmo salar のエントリーに記載されている、1)背鰭が3〜4棘9〜15軟条(今回の魚は3棘9軟条)、2)臀鰭が3〜4棘7〜11軟条(今回の魚は3棘8軟条)、3)脂鰭基底後部と側線の間の鱗数が10〜13枚(今回の魚は13枚)、4)脂鰭の周縁が灰色(写真下段右)、5)鋤骨の歯は弱く、後半部には歯がない(写真下段左の赤四角)、6)体は紡錘形、7)口は目の後端下部領域まで伸長する(写真中段左)、8)歯は良く発達(写真下段左)、9)側線の下に黒斑がない(写真中段右/体側前半部では側線の下にも黒斑がある)、10)尾鰭に黒斑がないなどの形質が確認でき、また養殖魚であるという事実を考慮すると、タイセイヨウサケであると判断しても良さそうである。ちなみに頭は比較的小さめ。

八王子総合卸売センター内の総市水産で購入(当日はキロ880円/4.3kg)。活け〆時に内臓も処理済みであっため、重量比の可食部分が比較的多いのは嬉しいところ。養殖魚だけにかなり脂が乗っているが、嫌みな感じはない。また旨味も多い。刺身、炙り、ルイベなどの「生食」はもちろんのこと(写真下左)、塩焼き、塩焼きのほぐし身をたっぷり乗せた丼、フライ、大根/ジャガイモ/玉ねぎ/人参をたっぷり入れた「あら」の味噌汁、中落ちをハーブ塩で炒めたものを混ぜたスクランブルエッグ、サーモンパスタ、厚めに切った身を甘酢で締めてから富山の「ますの寿司」風にしたもの(写真下右/サクラマスで同じように自作したものと少々風味が違うのが面白い)など色々試したが、どんな料理にしても非常に美味。

【注】ちなみに元々は外来種ながら日本に定着してしまったブラウントラウトもサルモ(タイセイヨウサケ)属(学名は Salmo trutta Linnaeus)である。