新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

302: ヒラスズキ

スズキ目スズキ亜目スズキ科スズキ属
学名:Lateolabrax latus Katayama
英名:Blackfin seabass(FishBaseによる/「新訂原色魚類大圖鑑」には英名表記なし)

神奈川県小田原産の全長44cmの活け〆雄個体(白子入り)から摘出した左右の「魚のサカナ」。右側の標本は射出骨付き。「平鱸のヒラスズキ」の形は、これまでに紹介してきた同じスズキ科のスズキおよびタイリクスズキのものと非常に良く似ており、1)烏口骨の『背鰭』部分の根元の切れ込みが比較的浅い、2)烏口骨の『嘴』の先端部が太い、3)下部の湾入部が比較的丸いなど、本当に些細な相違点が挙げられる程度。肩甲骨孔が円形に近いことも含め、どちらかと言えばスズキのものにより似ている印象。



日本近海に生息するスズキ科の魚は3種のみ(その内タイリクスズキは元々は外来種)だが、これらの外見はお互いに似通っているため、慣れていないと3種の見分けは案外難しいと思われる。今回の魚は、1)尾柄は太く短い(写真中段左)、2)背鰭は13棘15軟条(写真中段右)、3)尾鰭の切れ込みは浅い(写真中段左)という形質から、「検索」的にはヒラスズキであると判断することが出来る。また「新訂原色魚類大圖鑑」のヒラスズキの項に記されている、4)体高はやや高い、5)主鰓蓋骨の2本の棘の間は深く湾入する、6)両顎、前鋤骨、口蓋骨歯は絨毛状(写真下段右)、7)下顎の下面に鱗が1列に並ぶ(写真下段左/同書によれば、これでスズキと区別できるとのこと)、8)腹鰭は濃色などの形質も確認した。

八王子総合卸売センター内、高野水産で購入(当日はキロ2,000円/1.1kg)。今回は半身を刺身に、半身を塩焼きに。刺身は、固すぎず柔らかすぎずの絶妙な歯応えに、キメの細かい半透明の美しい身。口に入れると、強い、しかしながら嫌みにならない程度の旨味と甘味を感じる。極めて美味。塩焼きもしっとりとした身が素晴らしく、旨味/甘味のバランスも絶妙。非常に美味い。ヒラスズキを口にしたのは恐らく10年以上ぶりだったはずだが、記憶通りの美味さに大満足した次第。

ちなみにスズキの旬が夏であるのに対し、ヒラスズキの旬は冬であるとされている。また『新訂原色魚類大圖鑑』のヒラスズキの項には「スズキより不味」と記載されているのだが、どのようなヒラスズキを食べたらこの評価になるのだろうか(もちろん「好み」はあると思うが、、、また旬のスズキが非常に美味であることは言うまでもない)。

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【参考】スズキとヒラスズキの見分け方

下の写真は、各段とも左側が本稿のヒラスズキ、右側が2011年1月に購入した静岡県産のスズキ(【フッコ】クラス/ただしこの写真の個体は、旬を外れているためか通常よりかなり痩せて見えるので念のため)のもの。上から全体像、頭部のアップ、尾柄部のアップを並べたもの。



ヒラスズキは、1)スズキより体高が高く、ずんぐりした体型である、2)頭部が尖り気味で、頭部の背縁が眼上で多少凹む、3)尾柄部が太く、背鰭/臀鰭の最後尾の軟条から尾鰭までの距離が短く見える、4)尾鰭の切れ込みが浅いなどの形質がご理解頂けるはず。また上記した通り「下顎腹側の鱗」はスズキには存在せず(タイリクスズキに関しては未確認)、またスズキの背鰭軟条数は少なく通常12~14本。

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