新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

351: ブルーギル

スズキ目スズキ亜目サンフィッシュ科ブルーギル
学名:Lepomis macrochirus Rafinesque
英名:Bluegill [原], Bluegill sunfish

通名としてはビワコダイ/琵琶湖ダイ(滋賀県周辺/後述)があるが、全国的に標準和名、もしくはそれを略したギルで通用すると思われる。ブルーギルは北アメリカ原産の魚で、そもそもは1960(昭和35)年に今上天皇がシカゴ市長から寄贈された個体を持ち帰り、それを水産庁淡水区水産研究所が食用研究対象として飼育した後、1966年になって静岡県伊東市の一碧湖に放流したものが元になっているとのこと。近年釣り人の密放流などによりその生息域を爆発的に広げており、生態系を破壊する恐れがあることから、現在では「特定外来生物」の指定第一次指定種の一つとして規制・防除の対象となっている【参考】

さて、今回の魚は愛知県岡崎市内のとある野池における釣りもので、全長約14cmの個体から摘出した左右の標本。写真右は、写真左の左側の標本を反対側から観察したもの。ちなみにサンフィッシュ科の「魚のサカナ」は本稿が初紹介となる。「ブルーギル(無理矢理漢字を当てれば「青鰓」)のブルーギル」は、これまでに紹介してきたスズキ目スズキ亜目の「魚のサカナ」の中に形状が「酷似」したものはなく(強いて挙げればクロサギのものに最も似ているような印象)、1)肩甲骨の前方下部が比較的大きく突出する、2)肩甲骨孔は比較的大きめだが、面白いことに左右の標本で径が大きく異なる、3)烏口骨の上方突起(『背鰭』)部は大きく、その前縁は直線的で垂直方向に立ち上がる、4)烏口骨の『嘴』部の先端は比較的短い印象を与えることなどがその特徴として挙げられる。



外見からしブルーギル以外には考えられない魚であったが、一応「日本産魚類検索 第2版」のサンフィッシュ科の検索キーをチェックし、 1)口は小さく、主上鰓蓋後縁は眼の前縁に達しない(写真中段左)、2)主鰓蓋骨に後部突起がある(写真中段右の赤丸)、3)体高は高く、体長(11.5cm)は体高(5.0cm)の約2.3倍、4)側線有孔鱗数は40などの形質からブルーギルに辿り着くことを確認。

2012年8月の帰省中に愛知県岡崎市内のとある野池で中1の長男がミミズを餌に釣ってきたもの。今回の釣り場の水質は残念ながらあまり良くなく、実際「魚のサカナ」の標本調製用に魚体を下ろしている時もかなり生臭かったため試食は諦めた。

ちなみに滋賀県農政水産部水産課では、外来魚駆除対策事業の一環として琵琶湖で釣獲したブルーギルオオクチバスブラックバス)を食べることを勧めており、県のサイト内の「外来魚駆除対策事業〜外来魚問題」の頁の左下にある『★Catch&EAT!!〜外来魚の調理方法★』からは「バス・ギルのオススメ調理法」のPDFをダウンロード可能。また「道の駅草津・グリーンプラザからすま」では、ブルーギルを材料にしたなれ鮨である「ビワコダイの熟鮓」(およびそのオオクチバス版の「ビワスズキの熟鮓」)を販売しているとか。


【参考】この件に関しては、平成19年に滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールで開催された「第27回全国豊かな海づくり大会(びわ湖大会)」で、陛下ご自身が以下のように述べられている。

外来魚の中のブルーギルは50年近く前,私が米国より持ち帰り,水産庁の研究所に寄贈したものであり,当初,食用魚としての期待が大きく,養殖が開始されましたが,今,このような結果になったことに心を痛めています。

宮内庁ホームページ内の「主な式典におけるおことば(平成19年)・平成19年11月11日(日)」を参照)