新・魚のサカナ(鯛のタイ)図鑑(引越中)

いわゆる「鯛のタイ」の写真集

56: マハタ

スズキ目スズキ亜目ハタ科ハタ亜科ハタ族ヒポルソドゥス属【注1】
学名:Hyporthodus septemfasciatus (Thunberg)【注1】
英名:Sevenband grouper [原], Convict grouper

新潟産の全長39cmの天然(店員に確認済)個体から摘出した左右の「魚のサカナ」。左側の標本は射出骨付き。写真右は、写真左の右側の標本を反対側から観察したもの。「真羽太のマハタ」は、これまでに紹介してきたハタ科の「魚のサカナ」と基本的な形状の特徴を共有している。ただし、1)肩甲骨孔が楕円形で比較的小さい、2)烏口骨下部が比較的深く半円状に湾入する、3)烏口骨の『背鰭』部分の前縁は直線的で、烏口骨本体に対して垂直方向に立ち上がっている、4)『嘴』部の根元と烏口骨本体の接合部はあまり細くならない、5)烏口骨の『嘴』部は長いが、筋が一本通っているために頑丈な印象を受けるなど、独自の特徴も幾つか挙げられる。

上の写真の射出骨付きの標本では、烏口骨の『背鰭』に相当する部分の下部分に小孔が開いている(ただし反対側の標本にはこのような孔はない)。また『背鰭』の部分の湾曲の程度は大きくない。



ハタ科の魚は種類が余りにも多く、鮮魚店の店先でそれらを確実に見分けるのはなかなか難しい。今回も「日本産魚類検索 第2版」の同定の鍵を慎重に辿り、1)背鰭は11棘14軟条、2)臀鰭は3棘9軟条(写真中段左)、3)眼隔域は平坦、4)体に横帯がある、5)胸鰭は17軟条、6)口蓋骨に歯がある(写真中段右の緑丸)、7)後ろから2つめの横帯はニ分する(写真下段左の赤矢印)、8)尾鰭後縁は白い(写真下段右)などの形質を確認し、マハタであると判断。外見や体色が良く似たマハタモドキとは、形質7および8(マハタモドキは、後ろから2つめの横帯はニ分せず、尾鰭は一様に暗色)によって区別可能とされるが、それらの形質がはっきりしない個体もあり、両者の見分けはそれほど簡単ではない。また「カンナギ」と呼ばれるマハタマハタモドキの老成魚ではこの横帯が消えてしまうため、両者の見分けはより困難(ほぼ不可能?)となる。

2011年11月に角上魚類日野店で購入(当日は3,000円/匹)。体全体が粘液に被われてヌルヌルする。腹の中には白い脂の固まりが詰まっており、当然身にもたっぷり脂が乗っている。活け〆の個体ではなかったものの、さすがはハタ科の魚といったところで、しっとりキメの細かい透明感のある身質。刺身を1枚口の中に入れ歯を立てると、コリコリとした心地よい歯応えがある。まずは脂からくる甘味を強く感じるが、その裏側には上品ながらしっかりとした旨味が立ち上がってくる。美味。繊細な風味なので、個人的にはわさび醤油よりもポン酢の方が合うように思った。「あら」は潮汁に。こちらも美味。

【注1】2007年出版の以下の論文(全文PDFへは要アクセス権)は、従来「マハタ属」に分類されていた魚類が単系統ではないことを明確に示しており、その出版以降マハタマハタモドキなど「体高の高いハタ類」は従来の「マハタ属」から「ヒポルソドゥス属」という別の属に分離された(属名は『復活』したものなのだとか)。2012年11月現在FishBaseでもマハタの学名として Hyporthodus septemfasciatus (Thunberg) が掲載されている(これまでのEpinephelus septemfasciatus はシノニム扱い)。つまり従来の「マハタ属」からマハタが消えてしまったことになる。これに合わせて『WEBさかな図鑑』では従来の「マハタ属」は、学名の Epinephelus をそのまま読んだ「エピネフェルス属」としている。
Craig,M.T., Hastings, P.A.. A molecular phylogeny of the groupers of the subfamily Epinephelinae (Serranidae) with a revised classification of the Epinephelini. Ichthyol. Res., 54: 1-17 (2007)

(04/19/13 一部改稿)